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2018年9月25日

ヒューマンインタフェースシンポジウム2018 参加報告

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◆ ヒューマンインタフェースシンポジウム2018
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片岡 佑太(立命館大学)
 2018年9月5日〜7日にかけて,ヒューマンインタフェースシンポジウム2018
が筑波大学の筑波キャンパスにおいて開催された.今回で19回目となる本シンポ
ジウムのテーマは「トランスボーダー」であった.HIに関する研究分野間のボー
ダーを取り除く契機とすべく,104件の一般発表,64件の対話発表,ワークショッ
プや講習会,特別講演などが盛大に行われた.
 5日〜7日の一般発表では,知覚・心理などの人間特性に関する基礎研究から,
高齢者・障がい者・運転者などの特定層にアプローチした研究,新しいインタフェ
ースの提案や,VR・AR・MRを活用した応用研究など,人と人工物のインタラクシ
ョンに関する幅広い研究が発表された.中でも筆者が興味を惹かれた研究は,小川
氏ら(東北大)の,タイムプレッシャーが人間の意思決定に及ぼす影響について分
析した研究である.同研究では,五目並べに基づく認知タスクを設定し,時間的制
約下で採られる人間の行動の傾向と,発生するエラーのメカニズムを定性的・定量
的に考察していた.
 また,6日の対話発表(ポスター・デモ)では,参加者と近い距離で議論ができ
るため,どのブースにおいても非常に活発なディスカッションがされていた.特に,
田辺氏ら(筑波大)の,牽引力錯覚を利用した並進・回転力提示装置のデモは,指
先把持型の装置によって,予め設定された経路に上肢が誘導される体験ができ,そ
の再現性の高さに体験者から驚きの声が上がっていた.なお本研究は,優秀プレゼ
ンテーションとして受賞されている.同日,宮下芳明氏(明治大)による特別講演
も行われ,HCIに関する新しい研究を開拓する勘所として,ある分野で常識となっ
ているフィロソフィーを,他分野に適用することが必要であることを述べていた.
また,そのためにも,論文やニュースサイトなどの情報収集を怠らないことや,研
究の枠組みに捉われず,最初は遊ぶ感覚で再現実験やモノづくりを行う重要性を説
明していた.
さらに,本シンポジウムにおける新たな試みとして,SIGGRAPHやCHIなどのトッ
プカンファレンス投稿を目指した,2つの企画が催された.1つ目は「メンタリン
グセッション」で,投稿を計画している研究に対し,経験豊富な研究者の方々がメ
ンターとして付き,研究に対するアドバイスが行われるものである.2つ目は「ト
ップカンファレンス採択を目指す研究者のために」の題目で,小山裕己氏(産総
研)・大槻麻衣氏(筑波大)から,トップカンファレンスの査読を通過する上での
心掛けや習慣,反省などについて,研究者にとっては興味深い講演が行われた.
20周年記念となる次回のヒューマンインタフェースシンポジウムは,2019年9月
2日〜5日に同志社大学の今出川キャンパスで開催される.
https://www.his.gr.jp/sympo/his2018.html

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