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2018年9月25日

第18回VR医学会学術大会 参加報告

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◆ 第18回VR医学会学術大会
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小林 大泰(東京大学)
 今年で18回目となる日本VR医学会学術大会が2018年9月1日(土)に徳島大
学常三島キャンパスにおいて徳島大学名誉教授・特命教授仁木登先生大会長のもと
開催された.
本大会の一般演題は「生活支援1」「生活支援2」「手術支援・手術計画1」「手
術支援・手術計画2」「画像・トレーニング」の5セッションから構成され,計22
件の口頭発表が行われた.また特別講演では,徳島大学大学院医歯薬学研究部泌尿器
科の高橋正幸氏による「泌尿器科領域でのロボット手術の経験」と,日本品質保証
機構の谷崎みゆき氏による「薬機法下における医療機器認証とQMS」と,京都大学
大学院医学研究科呼吸器外科の陳豊史氏による「呼吸器外科における3D画像やVR
を用いた試み」の3件が行われた.企業展示では帝人在宅医療株式会社様,株式会社
RYUKYU ISG様,株式会社医用科学研究所様の3社の出展があった.
「生活支援」のセッションでは咀嚼時の筋電信号を用いて疑似咀嚼音を提示するバ
イオフィードバック技術や視覚障害リハビリテーションで用いる白杖についての実
験的検討やVRを用いた脳卒中患者の歩行訓練システムなどの高齢者リハビリテー
ションに関する発表が行われた.その他にも授乳婦乳首の力学的特性に基づく哺乳
瓶用乳首の形状の検討や,水平方向の皮膚のずれを刺激として用いた触覚刺激提示
装置の開発といった発表もあった.「手術支援・手術計画」のセッションでは噛み
締めや瞬きを用いて拡大縮小操作を行う装着型視覚支援システムやARでの奥行き
知覚を向上させる手法,肺のCT画像による肺のミクロ構造の抽出などが報告された.
さらにロボット手術を対象とした微細血管吻合シミュレータや有限要素法を用いた
柔軟物の大変形シミュレーションなど様々なシミュレータに関する報告もされた.
「画像・トレーニング」のセッションではモバイル端末での医用画像の閲覧システ
ム,CT画像の病変検出のための画像処理アルゴリズムの自動構築手法,医療面接や聴
診手技の訓練を可能とするAR技術を用いた聴診器デバイスの提案などが報告され,
非常に興味深い内容であった.筆者も「生活支援」のセッションで発表を行い,質疑
応答では短い時間ながらも貴重な意見をいただくことができ非常に有意義な発表と
なった.
特別講演では,高橋氏はロボット支援手術を可能にしたda Vinci systemを取り上げ
て,泌尿器科領域におけるロボット支援手術の変遷について講演された.また,谷崎氏
は医療機器を世に出すために必要な承認・認証の流れについて詳しく講演され,加
えて現行の薬機法の下で医療機器製造に求められる品質システムの構築について講
演された.さらに陳氏は胸腔鏡手術の術前把握における3D画像,あるいは3D画像を
もとにしたVR画像の有用性や,肺がんの疑いのある微小な肺結節の術前マーキング
について自験例を交えて講演された.時間の関係で今後の展望については省略され
てしまい興味深い内容であっただけに残念であった.
今大会では例年同様幅広い医療分野からの発表があり,画像処理,AR,VRなどの技術
的進歩を肌で感じられる有意義な1日であった.日々発展する技術がさらに幅広い
分野に応用され,今後も様々な興味深い報告がされることを願う.
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