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2017年11月27日

VRST2017 参加報告

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|◆ VRST2017
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山本 拓也(立命館大学)
 11月8日から10日にかけて,今年で23回目となる Virtual Reality Software and
Technology(VRST)が開催された.シンポジウムはスウェーデンのヨーテボリに
あるLindholmen Conference Centreで行われた.VRSTはVR/AR分野における研
究成果の発表や経験と知識の交換を行う国際会議である.
 今年の参加者は約140名で,発表件数は論文発表が41件(Long Paper:29件,
Short Paper:12件),ポスター発表が39件,デモ発表が10件,Keynoteが4件だ
った.採択率はそれぞれ,Long PaperとShort Paperが21%,ポスター発表が65%,
デモ発表は40%であった.
 論文発表とKeynoteは3日間にかけて行われ,デモ発表は初日,ポスター発表は
2日目と3日目にわたって論文発表の合間に行われた.このポスター発表において,
筆者は発表を行った.初の海外発表ということもあり,自らの研究を伝えるだけで
はなく,議論するための英語力の必要性を痛感した.また,発表された研究の多く
でHTC Viveが利用されていた.これは,研究を行う上でのサポートや,広範囲の
トラッキングなどがVR/AR分野における研究者に好まれているからだと考えられ
る.
 Best Paperには群馬大学の奥寛雅らによる「Edible Retroreflector」が選出さ
れた.この研究では,ウェディングケーキのような料理に対するプロジェクションマッピン
グを行う場合や,手術時に基準点として体内に設置する場合などに使用することができる,
人体への毒性や影響がない再帰性反射材を提案していた.再帰性反射材の素材として,寒天
という身近に存在する食材を使用していた.発表中に作製した再帰性反射材を食べるデモ
ンストレーションを行い,会場からは驚きの声と大きさ拍手が起こった.
 私が最も印象に残っている発表は,Marioらによる「Occlusion in outdoor 
Augmented Reality using geospatial building data」である.この研究では,屋外に
おいてスマートフォンを用いてAR技術を利用する際に,仮想の建物と実際の建物
の閉塞関係を考慮した描画を行う手法を提案していた.現在販売されているスマー
トフォンのほとんどは深度センサが搭載されていないため,物体間の距離を把握す
ることができない.この解決方法として,どこにどのような建物が存在するかを示
した地理データとGPSによる位置情報を用いて,仮想と現実の建物の閉塞関係を
考慮した描画を行っていた.この研究以外にも多くの興味深い研究があり,VR/AR
分野において最先端の研究を行っている方々と交流することができ,様々な視点か
らの知見を得ることができた.
 来年のVRSTは日本の早稲田大学の早稲田キャンパス国際会議場で2018年11月
28日から12月1日にわたって開催される予定である.国内で開催されるため,国
内のVR/AR研究者にとっては絶好の機会である.
https://vrst.acm.org/vrst2017/

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