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2017年6月26日

第27回人工現実感研究会 参加報告

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|◆ 第27回人工現実感研究会 参加報告
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佐藤 絵理子(東京大学)
第27回人工現実感研究会は,6月1日,6月2日の2日にわたって,東京大学弥生講
堂アネックスセイホクギャラリーにおいて開催された.電子情報通信学会メディア
エクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会(IEICE-MVE),映像情報メディア
学会ヒューマンインフォメーション研究会(ITE-HI),情報処理学会エンタテイン
メントコンピューティング研究会 (IPSJ-EC),情報処理学会ヒューマンコンピュ
ータインタラクション研究会(IPSJ-HCI),ヒューマンインタフェース学会デバイ
スメディア指向ユーザインタフェース研究会(HI-SIGDeMO),日本バーチャルリア
リティ学会の連催であった.旧マルチメディア・仮想環境基礎研究会はメディアエ
クスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会と名称を変え,名称変更後初の研究会
となった.
本研究会では,一般講演30件と,「メディアエクスペリエンス・バーチャル環境
基礎の研究に期待すること」という題でパネル討論1件が行われた.またEC研究会
の学生優秀賞表彰式も行われた.以下,中でも特に印象に残った2つの講演につい
て報告する.
福田らは,「自然環境の分光測定結果による照明光推定オプティマルカラーモデ
ルの検証」において,オプティマルカラーを利用して写真中の照明光を推定する手
法を提案した.従来の色度平均モデルや錐体応答モデルでは,シーンの構成色に偏
りがある場合,照明光もその色に近いものであると推定されてしまう問題があった
.例えば,森の写真では照明光が緑色であると推定されてしまう.これに対し福田
らの提案する手法では,オプティマルカラーの分布を利用する.オプティマルカラ
ーモデルでは,シーンの構成色の偏りの影響を大きく受けることなく,安定した照
明光の推定が可能であることが示された.
また佐藤らは,「ディープラーニングを用いたCG画像のリアリティの定量評価手
法」において,CG画像のリアリティを定量的に評価する手法がないという課題に取
り組んだ.佐藤らの提案する手法では,CG画像と写真を識別するニューラルネット
ワークを独立して学習させ,得られた複数の識別器を統合したものを用いる.それ
らにCG画像を入力し,質画像であると誤識別された確率をその画像のリアリティで
あるとする.テスト用に作成したCG画像と実画像を入力した際,確かに実画像のリ
アリティが高いこと,また環境光を考慮して作成したCG画像の方が,環境光を考慮
せず作成したCG画像よりもリアリティが高いことが確かめられた.リアリティとい
う主観的な評価軸を,人間の目を介さずに定量的に,かつ安定して評価できる手法
であり,大変興味深い発表であった.
本研究会は筆者にとって初の対外発表の場であり,学外の研究者から質疑やコメ
ントをいただき見識を深めることができた.また,多数の研究会・学会の共催であ
ったこともあり,普段研究室では触れることのない分野の発表を聞くことができる
貴重な機会であった.他参加者の発表,さらにそれについての活発な議論も非常に
興味深く,本研究会を通じて得られた視点を是非今後に生かしていきたいと考える.
次回人工現実感研究会は,来年6月に東京大学にて開催される予定である.

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