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2013年10月25日

アルスエレクトロニカ2013 参加報告

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|◆ アルスエレクトロニカ2013 参加報告
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 長谷川紫穂(埼玉大学)

 2013年9月5日から9日にかけて, Ars Electronica 2013がオーストリア・リンツ
で開催された. 展覧会, シンポジウム, 各種イベントから構成されるアートとテク
ノロジーに関する世界最大規模の祭典に, 34回目となる今年は, 45カ国519名の
アーティストと科学者, また75,048名の来場者が参加した. 今年のテーマ「TOTAL
RECALL – The Evolution of Memory」は, 記憶やその保存について焦点を当てたも
のであったが, メタファーとしての記憶/記録だけでなく, 脳科学やDNAといった
サイエンスの側面と関連づけられた企画や作品展示はアルスエレクトロニカ独特の
ものであった.
 日本人作家の活躍は今回も顕著であり, 作品コンペティションであるPrix Ars
Electronicaにおける, 藤幡正樹氏, Perfume Global Site Project (Interactive
Art部門), SjQ++ (Digital Musics & Sound Art部門) , 江渡浩一郎氏とニコニコ
学会β, 渡邊英徳氏 (Digital Communities部門) らをはじめとした全10組の日本
人アーティストの受賞のみならず, Ars Electronica CenterにあるYour Cosmos
Installation (日本化学未来館Geo Cosmosの旧LEDパネルを再利用したもの) を
使っての真鍋大度氏・比嘉了氏によるパフォーマンス, バイオアートの企画展示
「Project Genesis」出品作家の岩崎秀雄氏, 福原志保氏 (BCL, Georg Tremmel氏
と共同) など, フェスティバル全体を通してその活躍をみることができた. また,
文化庁メディア芸術祭も共同企画として「A New Platform for New Memories」を
開催, 作品展示とともにガイドツアーやワークショップ, プレゼンテーションを行
ない, 日本のメディア芸術への関心を高めていた.
 そして今回, 新たな取り組みとして「The Future Rock Show」と題された, 23名
のアーティスト, ミュージシャン, キュレーターからなるブレインストーミング形
式のセッションが企画され, アルスエレクトロニカのアーティスティック・ディレ
クターGerfried Stocker氏を筆頭に, 急速に発展するインタラクティブ・テクノロ
ジーに関して, 主にパフォーマンスの場においての将来的な双方向性のあり方につ
いて議論がなされた. TOTAL RECALL Symposium, 受賞者プレゼンテーションPrix
Forumも含めると, 今回のフェスティバルでは, 社会や技術に対してのアーティス
トの姿勢や展望が言葉として表明される場が充実していた印象であった.
 さて, 来年はArs Electronica Festivalの35周年である. デバイスアート10周年
でもある2014年, アートとテクノロジーの関係性に新たな展開をみせてくれること
大いに期待したい.
http://www.aec.at/prix/

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