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2024年5月2日

IEEE VR 2024

太田 貴士(東京大学)

 今年のIEEE VRは3月16日から21日にかけて,アメリカのオーランド (Orlando)にて開催された.6日間の会期のうち前半の2日はワークショップ等が行われ,後半の4日で口頭発表などが行われた.主な企画として,基調講演3件,論文口頭発表194件,ポスター発表218件,リサーチデモンストレーション34件が実施された.今年も論文の査読プロセスは昨年と同様で,ジャーナルペーパートラックとカンファレンスペーパートラックが一括で査読された.投稿数は627件で,うち101件がカンファレンスペーパーとして採録され,79件がジャーナルトラックトラックとして採録された.
 Keynoteは18日からの3日間にかけて行われた.18日はCornell TechのShiri Azenkot氏が「XR Access: Making Virtual and Augmented Reality Accessible to People with Disabilities」という題名で講演し,視覚や聴覚に障がいのある人々が快適にVRを体験するための技術的課題などについて説明した.19日はDisney ExperiencesのMichael Tschanz氏が「Disney’s Industrial Controls Design and Data Analytics Ecosystem」という題目で,ディズニーでアトラクションの設計,開発に利用されているデータプラットフォームなど,アトラクションを裏で支えるディズニーの高い技術力を紹介した.20日の講演では,Laval Virtualの共同設立者であるSimon Richir氏が「The Laval Phenomenon: A Deep Dive into France’s VR Capital」という題目で,Laval Virtualの歴史を説明した.
 ベストペーパーには,100以上の実際のゲームからプレイ動画のデータセットを構築し,VR酔いを評価した研究や,強化学習を用いてリダイレクテッドウォーキングにおけるリダイレクションのコントローラーを動的に切り替える研究などが選ばれた.大規模なデータセットを作れるほどVRゲームは社会に深く浸透し,リダイレクテッドウォーキングの研究もコントローラーの最適化が研究対象とされるほど個々のコントローラーについては十分調査がされてきたことを示唆しており,VRの文化がかなり成熟してきたことが感じられた.また,ベストペーパープレゼンテーションには,視覚的・聴覚的・認知的な注意の散漫がCybersicknessに与える影響について調査した研究と,能動的な探索課題における二次タスクの存在が
Cybersicknessに与える影響を調査した研究が選ばれた.2件ともCybersicknessについての研究であり,研究者らがCybersicknessに高い関心を持っていることが伺える受賞結果であった.最後に,リサーチデモンストレーションのHonorable MentionにはChat-GPTをVRに応用した研究のデモが選ばれた.大規模言語モデルの分野の研究成果がVRの分野にも応用され始めていることが感じられた.
 IEEE VR 2025はフランスのサン=マロ (Saint-Malo) で2025年3月8日から12日にかけて実施される予定である.

公式サイト:https://ieeevr.org/2024/

Category: 学会参加報告