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2022年12月26日

DCEXPO 2022

清水 祐輝(奈良先端科学技術大学院大学)
 今年度から,DCEXPOはINTER BEE IGNITION と共催し,『INTER BEE IGNITION × DCEXPO』として,幕張メッセでの現地(11/16-11/18)とオンライン(11/1-12/23)によるハイブリッドで開催された.ハイブリットでの開催は今回が初めてであるが,現地では2万以上の参加者が集まり,オンラインも合わせると非常に多くの人たちに対して,コンテンツ産業とエンターテイメント産業における先端技術と可能性について発信することが出来る貴重な機会となった.
 プログラムでは,イノベーションによってコンテンツ産業の発展に大きく貢献することが期待される先端技術やコンテンツを広く公募したうえで,選ばれた8件の技術(深層学習AIを用いたリアルタイム音響処理プラグイン、電気味覚での塩味増強効果を活用した食器型デバイス、身体から生えてくる柔らかい分身ロボット、生きた皮膚を持つ指型バイオハイブリッドロボット、BMI技術を応用した神経リハビリテーション、みる角度によって色が変わる3Dプリンティング技術、超高解像度・超軽量のVRヘッドセット、クロスモーダル知覚を活用したビールのおいしさを増幅する音楽)について発表および体験を行う場が用意された.その他にも,現地及びオンラインにて100個近いセッションが行われ,現地開催後もwebでの聴講が可能である.
 筆者が興味深く参加させていただいた企画として,「DCEXPO企画:人間がより自由になるためのテクノロジー ~最先端HMDをMetaが語る」が挙げられる.本講演では,Meta社のDr. Nathan Matsudaと奈良先端科学技術大学院大学の清川清教授が,最先端HMD,HMDの未来,人間がより自由になるためのテクノロジーについてそれぞれ講演を行った.
 Dr. Matsudaの講演は「High Dynamic Range VR」と題して,人間の知覚限界に近い輝度をサポートしたハイダイナミックレンジディスプレイを用いたHMDによって,従来よりもリアルな光を再現可能となるVRについて自身のプロジェクトと研究を通して紹介した.それに対して,清川教授は「Eyewear Technology to Unleash Human Vision」と題して,人間の視覚とアイウェア技術の関係をHop, Step, Jump の3つのステップで分かりやすく紹介した.両者は,お互いの考えるVRやMRの可能性について語り合い,その後,Dr. Matsudaのプロジェクトについて掘り下げられていった.最後には,HMDがどのようにして世の中に普及していくのか,他の技術を考慮したうえでHMDの立ち位置を確認しながら議論が進んだ.
 この議論は,現在非常に注目を集めるMeta社がどのような考えをもってHMDの研究や開発に取り組んでいるのかが分かるとても興味深い内容であった.さらに,この講演を通して,新たなコンテンツ体験を可能とするHMDの進化と可能性について,筆
者自身の研究の参考となるところがあり,今後も注目していきたいと感じた.
公式サイト:https://www.dcexpo.jp/

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