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2022年12月26日

AsiaHaptics 2022

森崎 汰雄(東京大学)
 2022年11月12日から14日にかけて,国際会議AsiaHaptics 2022(http://asiahaptics2022.com/index.html)が開催された.AsiaHapticsは隔年で開催される触覚(ハプティクス)分野の国際会議であり,触覚ディスプレイやセンサなど幅広い研究が発表される.また、ほぼすべての発表がデモ展示というのがこの会議の大きな特徴であり,論文だけではなかなか研究の全容を掴みにくい触覚分野において重要な会議である.AsiaHapticsは隔年で開催されているが,2020年の開催はCOVID-19流行のため見送られており,4年ぶりの開催であった.開催地は中国の北京であったが,今年度も中国への渡航が困難なことから,東京とソウルの二か所にサテライト会場が設けられ,合計三か所での同時開催となった.東大 中村拓人先生をはじめとする東京サテライト会場の確保やその運営を担当された先生方には,この場を借りて心より感謝を申しあげたい.
 本年度は合計で101件のデモ展示が行われた.このうち55件が北京,32件が東京,14件がソウル会場で展示された.また,このデモのうち29件は今年度より設立されたRegular paper (short, 6p以下)として投稿&採択された.論文出版のみを行うRegular paper (full,12p以上)も17件採択された.著者も東京会場にて空中超音波で遠隔駆動するパッシブアクチュエータについてデモ展示を行った.東京会場は12日のみの開催であり,コアタイムは11:00-13:00と14:00-16:00のいずれかであった.東京会場には多くの参加者が訪れ,体験と議論がひっきりなしに続いている非常に充実したデモイベントとなった.筆者のデモも多くの方に体験いただき,刺激的な時間を過ごすことができた.
 6名の審査員の評価により,東京会場からは7件のBest demonstration awardが選定された(Gold,Silver,Brons,5件のHonorable Mentions)。Gold WinnerはHoshiらの「Haptic Broadcast for Smartphones Using a High-Reality Vibration Conversion Method」,Silver WinnerはMoritaらの「A High-Resolution Suction Tactile Display Integrated with a Kinesthetic Haptic Display」,Brons WinnerはXuらの「HeatMagic: Intensity-adjustable Thermal Feedback System Based on the Vortex Effect and Thermal Radiation for Non-contact Thermal Interaction」であった.また,筆者のデモ展示もHonorable Mentionsに選出して頂いた.このうちXuらのHeatMagicについては筆者も体験することができた.このデモでは(ヒータのような)熱源によって提示される非接触な温感と機械的な触覚刺激を組み合わせることで,その温感をより高速に知覚させることが提案されていた.
 Reguralr paperからはBest Paper awardと3件のFinalistが選出された.Best paperにはLykovらの「DeltaFinger: a 3-DoF Wearable Haptic Display Enabling High-Fidelity Force Vector Presentation at a User Finger」が,FinalistにはShinodaらの「Creation of Realistic Haptic Experiences for Materialized Graphics」などが選定された.
 国境を越えて集まることができなかったのは残念であったが,多くの参加者にとって,ここ数年分の触覚分野の進展を実感できる貴重な機会になったのではないだろうか.つぎのAsiaHapticsは2年後,2024年に開催予定である.
公式サイト:http://asiahaptics2022.com/

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