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2023年1月26日

ISS 2022

松井 良太(慶應義塾大学)
 ACM ISS 2022(2022 ACM Interactive Surfaces and Spaces Conference)が,11月20日から23日にかけ,ヴィクトリア大学ウェリントン(ニュージーランド)を現地会場としたハイブリッド方式にて開催された.初日の20日にはWorkshop(4件)やTutorial(2件)などが行われ,基調講演(3件)や口頭発表(33件:Full Paper)などから構成される本会議は,21日から23日にかけて開催された.Full Paperの採択率は25.4%であり,採択されたものは論文誌「Proceedings of the ACM on Human-Computer Interaction」に掲載された.また,会期翌日の24日には,HCIの諸領域に関するセミナーとしてHCI Master Classが開かれ,幅広い知見の共有が図られた.
 S. Zollmann准教授(University of Otago)による基調講演では,広い空間領域を対象としたExtended Realityの技術的挑戦などについて述べられた.空間上の測位手法などが課題であるのに対し,画像からカメラの位置や姿勢を推定する技術などの動向が取り上げられた.これらの技術的進歩とともに,建設現場のデザインや,現地におけるスポーツ観戦の拡張などへの応用シナリオが紹介された.
 Full Paperの中から選考されたBest Paper Awardには,T. J. Dube氏(University of California)らの「Push, Tap, Dwell, and Pinch: Evaluation of Four Mid-air Selection Methods Augmented with Ultrasonic Haptic Feedback」が選ばれた.この論文は,非接触での情報端末操作に適したジェスチャや,触覚フィードバックの有無などを比較検討したものである.画面上に表示される目標を非接触操作で選択するユーザ実験を通じ,選択の所要時間や正確さなどが評価された.その結果,指を下方向に動かすタップのジェスチャが優れていると結論付けられた.また,NASA-TLXによる評価では,タップに対する心理的,身体的な負担が比較的少ないことのほか,触覚フィードバックが操作の正確さなどに良い影響を与えることを明らかにした.
 筆者は現地で会議に出席し,手指のジェスチャ動作を特徴づける映像解析により,手指運動障害を発見する手法についてポスター発表を行った.提案手法の簡便さなどの利点をアピールしつつ,より良い研究にするための改善点や課題などもご指摘いただき,有意義な議論ができたと感じている.また,口頭発表においても,ZoomやDiscordなどのツールを活用し,現地とリモートの双方から活発な質疑が交わされた.現地会場では,柔らかい質感のキューブ型マイクが投げ渡しで共有され,スムーズなコミュニケーションが図られたことが印象的であった.
 次回のISS 2023は,11月5日から8日にかけ,アメリカのピッツバーグにて開催予定である.
https://iss2022.acm.org/

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