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2022年11月25日

ISMAR2022

児玉大樹(東京大学)
 IEEE ISMAR2022(International Symposium on Mixed and Augmented Reality)は,10月17日から10月21日にかけて5日間開催された.ISMARはAR/MR分野のトップカンファレンスであり,今年で21回目の開催となる.昨年のISMARは完全オンライン開催であったのに対し,本年度はシンガポールとオンラインでのハイブリット形式で開催された.ISMARへの参加登録者数は644人に上り,主な企画として,基調講演2件,論文発表136件(23セッション,内Journal Paper35件,Conference Paper93件,掲載済みTVCG論文8件),ポスタ発表107件,ワークショップ19件,デモ発表15件が実施された.
 基調講演であるHenry Fuchs教授 (University of North Carolina at Chapel Hill) の講演では,50年かけてARグラスがどのように発展を遂げてきたかが紹介された.具体的には,(1)ARグラスが50年の間にずいぶん進歩したこと,(2)ARグラスが世の中に広く普及し,現在の度付きメガネに取って代わるまでには10年か20年かかると考えられること,(3)ARグラスは将来スマートフォンと同じように,あるいはそれ以上に私たちの生活を変えてくれる可能性があること,(4)ARグラスはスマートフォンよりも身近で,私たちの生活のさらに多くの場面で役立ち,さらに有益なものになる可能性があること,(5)そして,だからこそ,ARグラスを有害なものではなく有益なものにしていこうとHenry教授が考えていること,などの話があった.加えて,Henry教授のUNCでの研究としてARグラスを教師から学習者への身体スキル伝達に用いる取り組みやリハビリに応用する取り組みについて紹介されていた.
 もう一つの基調講演として,Marc Pollefeys教授 (a Professor of Computer Science at ETH Zurich and the Director of the Microsoft Mixed Reality and AI Lab in Zurich) による講演が行われた.講演では,HoloLens2が提供するARアプリケーションについての様々な事例が紹介された.例えば,空間コンピューティング技術を用いる例として,HoloLens2を用いて画像ベース位置認識を行うことでHoloLens2ユーザの移動軌跡を高い精度で記録する取り組みが紹介された.
 全体を通した傾向として,XR技術を用いて直接的に教育やリハビリの支援を行う研究だけでなく,ヒトの認知への影響に着目し,認知を自在にデザインすることで学習支援を行う研究も増えてきたように思う.筆者が発表した論文発表のSocial Issues, Behavior and Empathyセッションでも,VR技術を応用することで教育やリハビリなどの効率化を目指すことを最終目標としつつ,その第一歩目としてユーザが提案手法を体験した際のsense of embodimentを調査する試みや,学習支援のためにsense of embodimentの向上を目指す研究が数多く発表された.提案手法の妥当性だけでなく,産業や教育分野への応用に向けたFuture Workについても議論することができた良い機会となった.
 クロージングセッションではISMAR2023がシドニー(オーストラリア)にて開催予定であると発表された.また,IEEE VR2023が上海(中国)で開催されることも改めて伝えられた.
公式サイト https://ismar2022.org/

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