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2021年1月18日

ISMAR 2020


藤本 雄一郎(奈良先端科学技術大学院大学)

 IEEE ISMAR (International Symposium on Mixed and Augmented Reality)はAR
/MRのトップカンファレンスであり,19回目となる今年は2020年11月9日-13日の5日
間で開催された.本来ブラジルのポルト・デ・ガリーニャス(Porto de Galinhas)
での南米初開催予定であったが,昨今の状況を鑑み,代わりに初の完全オンライン
開催となった.
 ソフトウェアとしては,口頭発表,ポスター発表ともに,VirBELAというツール
が使用され,各参加者は自信のアバターを作成し,バーチャル空間として再現され
たリゾート島の中を歩き回る形式で,会議に参加した.また,YouTube Liveでほと
んどのセッションがライブ公開され,そちらからの視聴も可能であった.加えて,
スケジュール管理や,チャットベースのQ&AはWhovaというツールが使用された.
VirBELAでの参加は,ライブ感を十分に感じることができ,個人的には非常に満足
のいく方式であった.
 オンライン開催ということもあり,参加登録者は昨年の455名を大幅に上回る625
名となった.国別の参加者数は,上から,アメリカ154名,中国75名,日本63名,
ドイツ62名,ブラジル54名とのことであった.開催時間は,日本時間にして20:00-
24:00,4:00-9:00と,やや過酷だったものの,各国のタイムゾーンを鑑みて可能な
限り多くの人が参加できるように努めた運営側の配慮は感じられた.
 口頭発表の採択件数は87件(TVCGからの招待発表除く)と,昨年の50件を大幅に上
回り,シングルセッションを踏襲しつつも,計19セッションと大ボリュームであっ
た.採択率は会議論文が22.8%,TVCG論文が5.96%,合計28.8%と,昨年と同程度で
あった.
 基調講演は,University College LondonのYvonne Rogers氏が「Augmenting
Cognition」というタイトルで,Google Research,USC Institute for Creative
TechnologiesのPaul Debevec氏が「Shining Light between Real and Virtual
Worlds」というタイトルで,MIT Media LabのRamesh Raskar氏が「Augmented
Surgeons and ‘Anatome’: AI & AR for IA」というタイトルでそれぞれご講演さ
れた.個人的には Raskar氏の「(人の作業を支援するシステムにおいては)フォト
リアリスティックな情報提示ではなく,機能的リアリズムを備えた(伝えるべき情
報を適切に表現する)情報提示が重要である」というお話に非常に共感でき,印象
に残った.
 今年のBest Paper Awardは,Xingbin Yangらの「Mobile3DRecon: Real-time
Monocular 3D Reconstruction on a Mobile Phone」が受賞した.これは,タイトル
通り,スマートフォンなどのモバイルデバイスでのリアルタイムの環境マップ構築
手法を提案したものである.従来の方法と異なり,密なデプス推定だけでなく,そ
の後のメッシュ生成までオンラインで効率的に行えるとのことであった.また,
Best Paper Honorable Mention Awardは,Nawel Khenakらの「Spatial Presence,
Performance, and Behavior between Real, Remote, and Virtual Immersive
Environments」が受賞した.著者らは,実環境,遠隔環境,VR環境で,電動車椅子
を用いたナビゲーションタスクを被験者に行わせ,Spatial presence(そこにいる
と感じる感覚)やパフォーマンスなどへの影響を比較した.その結果,実在感におい
ては,遠隔環境とVR環境に差がないにもかかわらず,障害物衝突回数がVR環境の方が
多くなる,などの興味深い知見がいくつも明らかとなった.
 全体としては,ここ数年の傾向であるが,VRとAR/MRの垣根を超え,これらの技術
の人の認知への影響を確かめた研究や,特定の実応用を見据えた具体的課題に取り
組む研究が多くみられたように思う.筆者の研究室からも,「Guideline and Tool
for Designing an Assembly Task Support System Using Augmented Reality」と
いうタイトルで口頭発表を行った.これは不慣れな人が,ARを用いた組み立て作業
支援システムを設計する際の,情報提示方法ガイドラインとウェブツール(Dr.AR)
を提案したものである.インターネット上で公開しているため,興味がある方には,
ぜひご活用いただきたい.
 来年度のISMAR2021は,2021年10月4日-8日に,イタリアのバーリ(Bari)で開催
される予定である.

公式サイト: https://ismar20.org/

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