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2019年12月27日

ISMAR2019

中野萌士(奈良先端科学技術大学院大学)
 18回目を迎える今年のIEEE ISMAR(International Symposium on Mixed and Aug
mented Reality)は初めて中国の首都である北京にて10月14日から18日の5日間に
渡り開催された.5日間のうち,1日目と最終日にはワークショップとチュートリア
ルなどが行われた.
 ISMARは前身のISARやISMRを含めると20年以上の歴史を持つMRとARのトップカン
ファレンスである.参加者は過去最大の458名で29カ国から参加登録が確認された
.そのうち,59.1%は中国からの参加者で,日本の参加者は次点の6.28%だった.
会議では口頭発表50件(そのうち36件が会議論文,14件がTVCG論文),109件のポ
スター発表,24件のデモンストレーション発表,ワークショップ6件,チュートリ
アル3件,Doctoral Consortium,SLAM-for-AR Challengeが行われた.採択率は会
議論文が22.1%,TVCG論文が8.5%であり,合計30.6%であった.
 基調講演は2日目にPeking University所属のWen Gao氏が「AVS3 — A New Gener
ation of Video Coding Standard for Super High Vision and VR/AR」というタイ
トルで,カメラの高性能化によって映像形式が4/8Kや360度映像に移り変わってい
き,増大していくデータ量をどのように圧縮していくかについて講演された.
 3日目にはSenseTime / Chinese University of Hong Kong所属のXiaoou Tang氏
が「AI + AR: Magic in the AIR」というタイトルでめまぐるしい発展を続けるAI
とARをどのように組み合わせるかについて 講演された.
 4日目にはGraz University of Technology所属のDieter Schmalstieg氏が「A re
search agenda for situated visualization」というタイトルで,VIS(Visual an
alytics,Information visualization,Scientific visualization)などの情報を
AR技術によって現実世界に位置合わせを行うことによる効果や課題,重要性につい
て講演された.
 3日目夜のバンケットは通称鳥の巣(Bird’s nest)と呼ばれる2008年度北京五輪
会場の中にあるレストランで行われた.特にシーフードが美味しく,楽器の生演奏
とともに美味しく頂いた.
 また,筆者が特に気になった研究を2件紹介する.
AR HMD Guidance for Controlled HandHeld 3D Acquisition
 多数の角度からの写真を用いて3Dモデルを生成する手法(3D reconstruction)
は,データ量の不十分さなどにより,穴あきが生じるなどの問題がある.この論文
では,ホロレンズを装着し,得られたメッシュ情報から,ユーザがオブジェクトの
十分な情報を取得するためのARガイドを提供し,3Dモデルを精度良く再構築するこ
とに成功した.
 品質が良い3Dモデルを作成するために強力なハードウェアを導入し,計算コスト
を増加させるのではなく,ユーザの撮影タスクを簡略化することで,3Dモデルの品
質を改善することはとても興味深い.一方,論文で提案されているガイド方法は一
部のユーザにとっては複雑であったため,さらなる研究が必要である.
Is It Cold in Here or Is It Just Me? Analysis of Augmented Reality Tempera
ture Visualization for Computer-Mediated Thermoception
 この論文では,ホロレンズに赤外線カメラを搭載し,ユーザの体と環境に視覚提
示を行うことで,ユーザの温度認知に影響を与えることに成功した.サーマルビジ
ョンモードと炎や氷の3Dモデルを重畳するARモードが搭載され,自分の体と環境の
温度認識を変化させていた.温度知覚に対する影響はARモードのほうが強かったこ
とが確認されたことに加えて,ユーザの物理的な体温に対しても影響を与える可能
性が示唆されていたことはとても興味深い.
 全体的に機械学習とARを組み合わせた研究が多く見られた.筆者もDeepTasteと
いうタイトルで食べ物の見かけをStarGANで変化させ,ユーザが認知する食べ物の
味や種類を変化させる研究を口頭発表した.ARは実空間での位置把握や3次元再構
築以外,GANsを用いた画像処理などと相性が良く,今後も機械学習と組み合わせた
研究が増えていくと考えられる.機械学習を使用することで,現実をより良く,面
白く変えていこうという研究が多く発表されており,自身の研究意欲が高まった
 次回のISMARはブラジルのポルト・デ・ガリーニャス(Porto de Galinhas)とい
うリゾート地で南米初開催される予定である.

公式サイト:https://www.ismar19.org/

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