HOME » 学会参加報告 » Asia Haptics 2018 参加報告
2019年2月2日

Asia Haptics 2018 参加報告

古本 拓朗(東京大学)

 今回で第3回目となるAsia Haptics 2018は,11月14日から16日までの3日間,韓国の仁川にて開催された.Asia Hapticsは,発表形式がデモ展示またはビデオ展示のみというユニークな学会であり,参加者は実物を見ながら,文書では伝わりにくい触覚のニュアンスまで含めて議論を行うことができる.今回は81件のデモ展示と15件のビデオ展示が採択され,これらすべての展示がホール会場で一同に会した.
 Gold Prizeに選ばれたのは,堀江氏らの”Enhancing Haptic Experience in a Seat with Two-DoF Buttock Skin Stretch”である.これは,臀部の皮膚を剪断変形させることによって,あたかも自分の体が動いているかのような感覚を与えるというものである.今回の展示では,ドライブシミュレータで車が加速したときや旋回したときに生じる慣性力を表現していた.慣性を表現できるドライブシミュレータというと体がすっぽり収まるような大型の装置を連想しがちだが,それを椅子の上に載せられるコンパクトな装置で実現しているところがポイントである.
 Silver Prizeには,代田氏らの”LiquidVR – Wetness Sensations for Immersive Virtual Reality Experiences”が選ばれた.これは,振動触覚と温覚を提示できるHead Mounted Displayに加えて,全身に装着した振動アクチュエータを使うことで,”全身が水に濡れる体験”を提示するというものである.今回の展示では,「シャワーを浴びる」という日常的なシーンと,「ソーダの中にいる」という非日常を体験することができた.
 上記2つの展示は,触覚が体験にうまく統合されており,利用シーンを明確に思い描くことのできるデモだった.
 もうひとつ筆者の印象に残っているのは,invited demoの1つであるMarco Salerno氏らの”Stiffness Perception of Virtual Objects Using FOLDAWAY-Touch”である.この研究では,硬さを表現できるジョイスティック型コントローラを提案している.今回の展示では,そのコントローラを使ってゲーム中のキャラクターを掴んだり投げたりすることができた.キャラクターを掴むと,そのキャラクターは手から逃れようとして動くのだが,そのときの手の中でジタバタしている感じがうまく表現されていたと思う.
 本大会では,多種多様な触覚関連の研究に肌で触れることができた.また,筆者も発表者として参加して,多くの方に展示を体験していただき,たくさんのアドバイスをいただいた.2020年開催予定の次回Asia Hapticsも,どのような展示が登場するのか非常に楽しみである.

http://asiahaptics.org/


Category: 学会参加報告