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2015年10月30日

ISMAR2015 参加報告

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|◆ ISMAR2015 参加報告
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金森俊雄(大阪大学)
 今年で14回目の開催となるISMAR2015が9月29日から10月3日にかけて福岡で開催された.本会議はMR・AR分野で最も権威のある国際会議であり,また日本での開催は実に8年ぶりである.発表は技術系論文を扱うS&Tとアートやメディア,人文系の論文を扱うMASH’Dの2トラックから構成され,S&Tにおける本年度の論文投稿件数はFull Paper 60件,Short Paper 43件であり,採択率はそれぞれ12件(20.0%),7件(16.2%) であった.さらに Full Paper 投稿論文からは4件がShort Paperとして追加採択され,全体採択数(率)は23件(22.3%)となった.また,採択済みのFull Paperは,論文誌としてIEEE TVCGに直接採録されている.
 会期は5日間にわたり,3件の基調講演,4件のチュートリアル,6件のワークショップ,32件の口頭発表,60件のポスタ発表,36件のデモ発表が行われた.最終日には無料の特別一般公開イベントとして,15件のデモ展示と日本語でのAR・MR技術セミナーが行われた.またISMARの一環として,福岡市博物館では新進気鋭のメディアアーティストによるエキシビションが開催された.
 基調講演は3件あり,筆者が特に興味を持ったのは以下の2件である.ISMARの共同創立者の一人であるGudrun Klinker氏は,実際に研究や産業用に使われているユキビタスARの一般的な概念を説明し,ユキビタスARの発展性や必要性について講演した.そして慶應義塾大学の稲見昌彦氏は,人間の身体能力を補綴・補強・拡張可能なAugmented Human技術に基づき,人間と機械が融合した「人機一体」の新たなスポーツ「Superhuman Sports」について講演した.また,Perceptionセッションで行われた口頭発表も非常に興味深かった.PunpongsanonらはAR環境で視覚情報を変調するだけで,物体の柔らかさに対するユーザの触知覚を操作できることを発表した.Kytoeらはビデオシースルー型ヘッドマウントディスプレイを用いたAR環境に
おいて,視覚刺激のPoints-of-Interest (POI) と聴覚刺激の POI が異なる位置にある際に生じる腹話術効果を調査し,これから視・聴覚のバイモダルARシステムを構築するための指標の一つを示した.S&T Best Full Paper AwardはArthらのInstant Outdoor Localization and SLAM Initialization from 2.5D Maps(オーストリア,グラーツ工科大学) に贈られた.一般公開されている2次元の地図情報を SLAMの初期化に用いることで,タブレット上でも精確かつインスタントに屋外環境におけるジオロケーションおよびグローバルトラッキングを可能にする手法であった. 
 次回のIMSAR2016は初のメキシコでの開催となり,2016年9月19日〜9月23日の5日間開催予定である.
 公式サイト URL: http://ismar.vgtc.org/

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