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2015年10月30日

アルスエレクトロニカ2015 参加報告

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|◆ アルスエレクトロニカ2015 参加報告
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井村誠孝(関西学院大学),安藤英由樹(大阪大学)
 2015年9月3日から7日にかけて,Ars Electronica 2015がオーストリア・リンツで開催された.Ars Electronicaはメディアアートに関する世界最高峰のイベントである.本年度はテーマとして「POST CITY – Habitats for the 21st Century」が掲げられ,ロボットやネットワークとの融合が進む一方で,気候変動といった課題にも直面する都市の未来の姿を考察する場が提供された.同時に,リンツ中央駅に隣接し現在は使用されていないオーストリア郵便局の中央集荷場が主会場Post Cityとなり,広大な建物内に都市のごとくに数多くの作品が展示されるという,「Post」に二重の意味を持たせるウィットが効いたテーマでもあった.
 Post City会場自体がさながら迷宮のようであり,屋上や地下のひょんなところに作品が展示されていたり,分配用の青い渦巻型スライダーが様々に利用されていたり(子供たちのための滑り台にもなっていた!)と,エンタテインメント性に富んだ空間であった.その会場のエントランスすぐに展示されていたのが筑波大学岩田洋夫先生のBig Robot M1であった.身長5mになった感覚を得ることができる搭乗操作型ロボットであり,実演のたびに注目が集まっていた.またPost City会場だけでなく,リンツの街の至る所に会場が設けられ,作品展示,アニメーション作品の上映,ライブパフォーマンスが行われていた.Digital Music and Sound Art部門でGolden Nica(大賞)を受賞した赤松音呂氏のchijikinkutsu(チジキンクツ)は,グラスの中の水に浮かべた針が地磁気と電流の作用によって水琴窟のように音を奏でるサウンドインスタレーションで,静謐な空間に響くかすかな音がなんとも心地よい作品であった.筆者は,グランフロント大阪内にあるナレッジキャピタルの展示に参画し,主に関西の研究機関により構成されるVisLab OSAKAの作品として,人の社会活動のデジタル化とその再可視化をテーマとした作品Lost Physical Existenceを展示した.
 会期を通じて,42カ国から946名のアーティストや科学者などが参加し,一般の来場者は約92,000名に上った.詳細なレポートは次号の学会誌の小特集として掲載の予定である.
 Ars Electronica 2015
 http://www.aec.at/postcity/

 

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