ICAT-EGVE2022
宮脇 亮輔(奈良先端科学技術大学院大学)
ICAT-EGVE 2022 は,11月30日から12月3日にかけて,慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催された.本会議は ICAT 2022 と EGVE 2022 の合同の国際会議であり,世界各国から横浜に参加者が訪れた.前回と前々回はオンラインでの開催であったため,実に 3 年ぶりでの現地開催であった.
本会議では慶應義塾大学の研究室を見学する Technical Tour,6 件の基調講演,17 件の Paper(うち 1 件 Short Paper,採択率 43.5%),15 件の Poster,そして 14 件の Demo からプログラムは構成された.
筆者は Technical Tourにて,ユーザインタフェース (Life Style Computing Lab),コンピュータビジョン (Hyper Vision Research Lab),インタラクティブメディア(Interactive Media Lab)を専門とする研究室をそれぞれ見学した.とくに Life Style Computing Lab では実際に研究の展示がなされており,クッションのような柔らかい素材にも応用できる入力デバイスや,マスクの紐を用いたインタラクション手法など多種多様でアイディアと実用性に富んだ研究を多く拝見することができた.
基調講演については,筆者がとくに印象に残っているものの一つに電気通信大学の Yoichi Miyawaki 教授の取り組みを挙げる.Miyawaki 先生のチームでは,われわれがもつ 5 本の手指に加えて「6 本目の指」を制御可能なハードウェアとして開発している.講演ではそれを中心とした人間拡張の技術についてご紹介いただいた.
Best Paper Award に選ばれたのは, Guy らによる Manipulating the Sense of Embodiment in Virtual Reality: a Study of the Interactions Between the Senses of Agency, Self-location and Ownership である.この研究は仮想アバタの身体を制御・所有しているという感覚を指す Sense of Embodiment (SoE) の構成要素の相互関係を調査した.その他にも Demo session では体験型の展示がされており,参加者は五感や全身を駆使した作品を存分に味わっていた.そして Demo session と同時間帯に展示されていた Poster session も非常に興味深い研究が多数あり,開催時間中はどのブースも終始一貫盛況であった.
本稿で紹介できたものは本会議の非常に限られた部分であるが,全日程を通して学術的交流や体験が多く観察され,3年ぶりの現地開催に相応しい充実した内容であった.次回の ICAT-EGVE 2023 はアイルランド共和国の首都ダブリンで,今回と同様に現地開催が予定されている.詳しい情報は公式ページを参照されたい.