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2018年12月26日

ISS 2018 参加報告

市川将太郎,高嶋和毅(東北大学)

 本参加報告は,Student Volunteer を努めた市川とDemo Chair を努めた高嶋(いずれも東北大学)の連名で報告する.二人とも業務の都合で全てを聴講できなかったため,二人の情報を合わせて会議全体の報告をしたい.11月25日から28日にかけて,野村コンファレンスプラザ日本橋にてACM International Conference on Interactive Surfaces and Spaces (ISS) 2018が開催された.前身のITSから名称を変更してこれが3回目の開催となる.本年は105件の論文投稿から24件のAcademic Papers,4件のApplication Papersが採択され,採択率は26.7%であった.2011年にITSが神戸で開催されて以来7年ぶりの日本開催ということもあり,採択された28件のペーパーの内8件が日本からのものであった.当然ではあるが,デモ・ポスター発表も日本の研究機関からの発表が目立った.デモチェアとしては,デモを多くして会議を盛り上げたいという意向があったので,27件のデモ(サイズ,暗さ,使用電源容量の要求は多様だった)をそれほど大きくない会場に配置するのは苦労したが,結果的に盛り上がりがあって,満足のいくものであった.特に地元の東京からの参加者にはデモ展示に慣れている人が多く,かなりの大物デモであっても設営・撤収の手際がとてもよく,展示のレベルも高かったことが印象的であった.なお,参加者数は,164人と,これまでのISS会議シリーズの中のトップ3に入るほどの盛況であった.当然ではあるが,アジアから(日本,韓国,中国など)の参加者が多かった.会期直後に同じく東京にてVRSTやSiggraph Asiaが予定されていた.ISSの参加者やSVと話をしていると,その全てに参加する予定の人やVRSTとセットで参加するという人たちもいた.3つ全部参加したかったけどどれかは諦めるという声も聴いた.関連する国際会議が同時期に集まったことで参加者増につながった様子がうかがえた.なお,SVは国際色豊かであったが,ペーパー,ポスター,デモの発表者であることが多かった.

 会議初日にはワークショップが行われ,2日目以降にキーノートやペーパーセッション等がシングルセッションで行われた.2日目と3日目のペーパーセッションの合間にデモ・ポスター発表の時間があり,最終日にはタウンホールミーティングとクロージングキーノートで締めくくられた.Interactive “Surfaces and Spaces”の会議名の通り,大型のタッチディスプレイを利用した複数人作業のためのcollaborative tools,近年普及の進むスマートウォッチ上のキーボード配列のデザインに関する研究,または,自動的に変形可能なデジタルテーブルを利用した空間インタフェースなど,多様なディスプレイ面上でのインタフェースに関するISS独特の研究分野に加え,複数台のRGB-Dカメラを利用したシステムを操作するフレームワークや,線画や写真画像を深層学習により自動着色するサービスとプロジェクションシステムを組み合わせた研究など,今日の技術を積極的に活用した幅広い分野の論文が発表された.Best Paperには,RGB-DカメラとCNNを用いて指先の細かいジェスチャの認識を可能にしたMohamed SolimanらによるFingerInput: Capturing Expressive Single-Hand Thumb-to-Finger Microgesturesが選ばれた.またBest Demo Awardとして,東京大学のYuqian SunらによるHandheld Haptic Interface for Rendering Size,Shape,and Stiffness of Virtual Objectsが選出された.ユーザが握った箱型のデバイスに内蔵された2枚の向かい合う羽の角度をサーボモータにより調整することで,VE内で握っている棒で触ったものの形,硬さの表現を可能にしていた.発表としては,タッチやサーフェスインタフェースまたはVRに関わる研究が多かったが,二件あったキーノートでは建築や都市デザインに関わるものであり,会議全体としては空間や建築との融合について考えさせられる機会は多かった.その中でも,クロージングキーノートにおいて,ライゾマティクスの齋藤精一氏は,都市をメディアとして利用する方法について講演をされた.氏がこれまで手掛けてきたとても著名な作品たちの紹介だけではなく,どのようにして都市(大規模な公園や公共の場)を利用するか,そのプロデュースの方法について豊富な経験をもとに議論がなされていた.

 ソーシャルイベントとして,初日の夜にHubでレセプションがあり,三日目には,居酒屋にてカンファレンスディナーがあった.掘りごたつ,カニ鍋(+雑炊を作る),タッチパネル式の飲み放題メニューなどは,外国からの参加者には好評だった.

来年のISS2019は11月10日から13日にかけて韓国,大田(Daejeon)のKAISTにて開催される予定である.

公式サイト: http://iss.acm.org/2018/

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