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2016年9月26日

SIGGRAPH2016(展示発表)参加報告

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|◆ SIGGRAPH2016(展示発表)参加報告
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一山智弘(東京大学)
 2016年7月24日から28日にかけて,カリフォルニア州アナハイムのConvention Ce
nterでSIGGRAPH 2016が開催された.アナハイムはディズニーランドがあることで
有名なリゾート地で,道路脇にはヤシの木が植えられており,周辺にはホテルが数
多く立ち並んでいた.本年度のSIGGRAPHでは467の論文のうち119が採択された(採
択率25%).
 会場はHall BからHall Dの3つのホールに分かれており,我々はHall CでX-secti
on Scopeのデモ発表を行った.これはAIプレートという特殊な鏡で空中立体映像を
作り出し,そこにスクリーンを入れると断面図が投影され,立体映像とその断面図
を同時に見ることができるという装置である.真上から覗き込まないと立体映像が
見えないため,傍から見ていると何をやっているのかが少しわかりにくいようだっ
たが,実際に体験してもらうと片言の英語の説明でもすぐに趣旨が伝わった.初め
は英語での説明に不安があったが,初日のデモが終わる頃には質問される内容とそ
れに対する返答が一通り準備できるようになり,日常会話に比べて相手の話す内容
が予想しやすくコミュニケーションが取りやすいと感じた.
 Hall Cは学生のデモ発表などが中心で,HMDを用いたVR関連の展示が数も多く賑
わっている印象だった.中でも,慶應大のチームがゲーム会社と共同で開発したHM
Dと全身触覚スーツを組み合わせたゲームは,自分の操作による画面の変化とヘッ
ドホンの効果音とスーツの触覚刺激が同期していて,非常に臨場感が高かった.だ
が,そのように感じた理由はHMDの映像の画質が群を抜いて高かったことによるも
のが大きいのかもしれないとも思う.やはり人間が得る情報量は視覚によるものが
圧倒的に多く,触覚などの他の刺激がリアルに感じられるためには高いレベルの映
像を提供できることが前提となってしまうのかもしれない.
 Hall Dはあまり見る機会がなかったのだが,一般企業の展示がメインだった.特
にNVIDIAがスペースの広さでも展示内容でも存在感を示していたという.
 Hall Bでは日替わりで様々なイベントが行われていた.25日に観賞したElectric
Theaterは最新のCGを用いたショートムービーの上映会で,コメディから感動系ま
で様々な作品があったが,どれも内容的にも技術的にも素晴らしいものだった.普
段映画を見るときはストーリーなどの内容に目が行ってしまうことが多いが,CG技
術に注目しながら改めて映像を眺めてみると,物の動き方やその場の雰囲気をうま
く表現するために数えきれないほどの工夫が盛り込まれており,それによって見て
いる側が無意識のうちにより深く映像に引き込まれているのだと気づかされた.
 このようにCGやVRの技術が映画などの芸術やゲームなどの娯楽に活かされている
具体的な例を見たことで,情報技術の応用範囲の広さを実感するとともに,人間の
生活を豊かにするために科学を応用する工学という学問の意義を再認識することが
でき,非常に有意義な体験になったと感じている.
 なお,来年度のSIGGRAPH 2017はカリフォルニア州のロサンゼルスで開催される
予定である.
http://s2016.siggraph.org/

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