UbiComp 2014 参加報告
+———————————————————————-+
|◆ UbiComp 2014 参加報告
+———————————————————————-+
米澤拓郎(慶應義塾大学)
Ubicomp’14(ISWC’14と併設開催)が2014年9月13日〜18日(併設ワークショッ
プ含む)にかけて米国シアトルで開催された.Ubicompはユビキタスコンピューティ
ング分野における重要会議の一つであり,参加者数も増加している.今年はISWC(
ウェアラブルコンピューティング分野の会議)を含め800人超の参加人数であった.
また新しい取り組みとして,Suitable Technologies社のテレプレゼンスシステムを
用いた遠隔会議参加がサポートされた.一般発表は454投稿数(paper 333件note 1
21件)のうち94件(paper 71件 note 23件)が採択され,採択率は20.4%であった.
Ubicompは学際的な研究分野であり,理論・技術中心のトピックだけでなく,社会問
題や,人間の心理・行動をも含む,複合的な問題を扱っている.本年度のプログラ
ムは3パラレル30セッションで開催されたが,トピックはSecurity, Data Mining,
Human Behavior, Children’s Therapy等多岐に渡る.なお,同会議のトピックの変
遷等については,「Identity Crisis of Ubicomp? Mapping 15 Years of the Fiel
d’s Development and Paradigm Change」という発表がなされたので,興味のある方
は参照されたい.Ubicomp’14の論文は1年間オープンでアクセス可能(公式Webプ
ログラムからリンク)であり,いくつかの講演映像はVimeoで公開されている.
Opening Keynoteでは,NASAで宇宙服開発を率いるAmy Ross氏が「Making Space
Suits」という講演を行った.宇宙服は併設会議ISWC のトピックとも合致しており
聴衆の高い関心を集めた.講演では,生命維持を行いながらも,より良い“居住
環境”を実現するための技術的問題や解決手法など,新型の宇宙服の紹介とともに
説明がなされた.また,Closing Keynoteでは,ワシントン大学のGaetano
Borriello 氏が「Open Data Kit: Applications of Mobile Devices in the
Developing World」という講演を行った.同氏は携帯端末でデータ収集を行うツー
ルキットのプロジェクトを率いており,ツールの紹介や,実際に発展途上国で広く
使われている様子が説明された.同氏は他にも様々な取り組みを紹介したが,講演
の最後に聴衆に向けた ”Work on real problems. Collaborate with experts in
the application domains. Disseminate your work openly. Keep developing
new capabilities.”といったメッセージには,同氏のこれまでの経験に基づく思い
が込められており,印象的であった.近年ソフトウェア・ハードウェアのオープン
化に伴い,容易にモノづくりが可能となったが,デモレベルに留まらず,実際の問
題を解決し,社会へデプロイ可能な研究開発を行っていくことが,同分野では特に
重要性を増すであろう.
なお,今年は日本からの論文も10件採択され,東京大学の高木らのスマホによる
電気自動車の接近検知の研究はBest Paper Nominationに輝いた.筆者らも,センサ
データストリームと映像ストリームを融合するSENSeTREAMという手法を発表した.
日本からの参加者も108名と多く,今後の同分野における活躍が期待される.来年の
Ubicomp’15は大阪で開催を予定しており,皆様も是非積極的に参加されたい.
http://ubicomp.org/ubicomp2014/
この記事へコメントすることはできません