IEEE WHC 2013 参加報告
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|◆ IEEE WHC 2013 参加報告
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長谷川圭介(東京大学)
2013年4月14日から18日までの5日間,韓国,大田(テジョン)において触覚研究
の国際会議IEEE World Haptics Conference 2013(IEEE WHC 2013)が開催されまし
た.投稿論文の総数は212本で,ポスター発表を含め125本(59.0%)が採択され,う
ち32 本(15.1%)が口頭発表という内訳でした.これは前回(2011)の投稿総数146本
(うちポ スター50,口頭発表40)に比べ約1.5倍にあたり,触覚という研究分野の
ますますの盛り上がりが感じられる結果といえます.
シェフィールド大学のTony J. Prescott,慶應義塾大学の稲見昌彦,オタワ大学
のAbdulmotaleb El Saddik,ジョージア工科大学のWayne J. Bookによる基調講演4
件のほか,4名の企業関係者によるIndustry Sessionが開催されました.Industry
Sessionにおいては多数の参加者による触覚技術の産業面における貢献の可能性に
関する積極的な議論が交わされ,触覚技術の関与する市場の規模に対する期待の大
きさが改めて実感されました.
今回の会議において特筆すべきはデモの多さでした.前回の47件を大幅に上回る
計80件ものデモが合計3日間にわたり展示されました.デモ展示は講演と同じく大
変盛況であり,特に振動触覚提示を応用した研究が多く見受けられ,提示刺激の時
間的特徴をチューニングすることによる多彩な触感の提示が研究のトピックとして
盛り上がっていることを感じさせました.Best Demo Awardは審査委員会によるも
のと会場の投票によるものがそれぞれ1件ずつで,前者にはW-H. Parkらの
”A Dragonfly with Traveling Vibrotactile Wave”, 後者にはK. Kuchenbecker
らの”Data driven Modeling and rendering of isotropic textures”が選ばれ,
両者ともに振動触覚に関連する研究でした.特に後者のデモについては,ペン型の
デバイスで等方的な触覚テクスチャを持つ素材表面を10秒間なぞった計測データか
ら統計的手法によりテクスチャモデルを生成し,ユーザにペン型デバイスを介して
これを提示するというものであり,触感の再現性の高さに体験者から驚きの声が上
がっていました.
Best Paper AwardはGregory J. Gerlingらの”An Engineered Tactile Afferent
Modulation Platform to Elicit Compound Sensory Nerve Action Potentials in
Response to Force Magnitude”に,Best Poster Awardは東京大学の櫻井達馬らの
”Sharp Tactile Sensation using Superposition of Vibrotactile Stimuli in
Different Phases”に授与され,Best Student Paper Awardは口頭発表の部が東京
大学の長谷川圭介らの” Aerial Display of Vibrotactile Sensation with High
Spatial-Temporal Resolution Using Large-Aperture Airborne Ultrasound
Phased Array”,ポスター発表の部が東京大学の木村文信らの” Rendering
Variable-Sized Lump Sensations on a Softness Tactile Display”に授与されま
した.今回の会議においては日本人研究者の受賞が目立つ結果となりました.
今後の触覚系の会議は,2014 Haptics Symposium,Eurohaptics 2014,World
Haptics Conference 2015と続き,それぞれヒューストン,ベルサイユ,(私の記
憶が誤っていなければ)シカゴで開催されます.
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