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2012年5月28日

CHI2012 参加報告

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|◆ CHI2012 参加報告
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伴 祐樹(東京大学)
 
今回のCHI2012(The 30th Annual CHI Conference on Human Factors in Comput-
ing Systems)は2012年5月5日から10日にかけて,アメリカ合衆国テキサス州・オー
スティンにて開催された.本会議はHCI分野最大ということもあって,2555名の参
加者が集まり,900件を超える発表が行われた.短い会期でこの膨大な発表数をこ
なす為に,連日同時に十数件の登壇,パネル,分科会によるセッションが行われる.
そのため,毎日冒頭に行われるMadnessの20秒プレゼンを見つつ,プロシーディン
グスや公式スマートフォンアプリを活用し,同時に行われる数多くの発表の中でど
れを聴講するかを吟味する(余談ではあるがこの公式アプリの出来が非常によく,
検索やマップ機能はもちろんのこと,スケジューリングやブックマーク機能まで充
実している).登壇型のセッションのほか実演展示であるinteractivityやポスター
セッション,企業による展示も数多く,非常に濃密な一週間だった.
全サブミット数のうち上位1%に選ばれたベストペーパーの発表には連日多くの聴
講者が集まり,中でも東京大学の佐藤宗彦がDisney Researchで研究していた,静
電容量のスペクトル変化を検知することで複雑な接触識別を可能にする“Touche”
の発表には立ち見も部屋に収まりきらないほどの聴講者が詰めかけた.この発表は,
その後のセッションでも,future worksに取り込みたいと度々話題に上るなど非常
に好評を博していた.interactivityでは連日多くの実演展示が行われていた.展
示内容も,TN液晶の視野の狭さを用いた裸眼立体ディスプレイ“DualView”や,タ
スクの報酬にお菓子等を提供することで専門性の高いコミュニティーソーシングを
実現する自販機“Umati”など非常にバラエティに富んでおり,連日たくさんの人
が会場に訪れ各ブースで活発な議論を交わしていた.CHIの様な同時に複数のセッ
ションが走る大きな会議では,例え多くの参加者がいても一回の発表を聴講できる
人数は限られている為,参加者全員に研究成果を見せることのできるinteractivity
は,多くの人に自身の研究を認知してもらう上で非常に重要であると感じた.
本会議にて日本からは,世界で六番目の参加者数である78名が参加した.会議5
日目には,近年CHIにおけるプレゼンスが大きくなってきている日本人同士の交流
の場を設け,今後の日本のHCI業界を盛り上げる機会としてCHI Japan Night 2012
が開かれた.普段なかなかお会いできないたくさんの先生方,研究者の方と交流で
き,非常に勉強になると共に,今後の研究に対する意欲も向上した.
筆者は本会議に初めて参加したが,論文のレベルの高さや白熱した議論には非常
に大きな刺激を受けた.次回のCHI2013は2013年4月にフランス・パリにて開催され
る.

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