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2012年3月26日

IEEE VR2012 参加報告

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|◆ IEEE VR2012 参加報告
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高嶋和毅(東北大学)

 今年のIEEE VR2012は,3月4日から8日まで,アメリカ,カリフォルニア州の
オレンジカウンティ,Westin Hotel South Coast Plazaで開催された.前半の
二日間は併催の3DUIシンポジウムや4件のワークショップが実施され,6日から
の3日間がVRの本会議である.オレンジカンティは,朝晩は少し冷えるものの
日中は20度を超えることもあり,湿度も適度で非常に過ごしやすい気候であっ
た.会期中はほぼ晴れていたので,ホテルの屋外に設置されているプールを利
用する宿泊客もたくさん見かけた.
 3日間の会期中,3件のKeynote,9つのPaperセッション,Poster(55発表),
Demo(7発表),2件のPanel, Exhibitsが行われた.初日の夜にはUniversity
of California, IrvineのiGravi Lab. へのバス移動によるテクニカルツアー
兼ディナーレセプションがあり,また2日目のバンケット中(食事後)にも
Keynoteがあるなど飽きのない充実したプログラム構成であった.なお,参加
人数は約420名であり,今年は日本からの参加者も多かったようである.
 フルペーパーの採択率は15.8% (15/95)であり,ショートペーパーは,9.5%
(4/42)であった.ショートペーパーは,これに 9件のフルペーパーからのダ
ウングレード採択分も含めて13件の発表となっていた.今年は,IEEE VRでア
クセプトされたフルペーパーは,a special edition of IEEE Transactions
on Visualization and Computer Graphicsに掲載されることとなった.そのた
めに,全部で137件の投稿のうち,69.3%がフルペーパーとしての投稿になった
ようである.厳しい査読を勝ち抜いた論文はどれもハイレベルであり,発表者
のプレゼンテーションも非常にうまかったと感じた.Kinect関連の研究が増え,
1つのセッション(セッション名 Modeling with Depth Sensors)も設けら
れていたことが印象に残った.その他のペーパー,ポスターやデモでも色々な
ところでKinectを目にし,Kinectの応用のみを意識した研究もいくつかあった
が,VRやCGの技術とうまく組み合わせて完成度の高いシステムを構築している
例も多かった.工学的な内容だけではなく,VRの古くからの課題である奥行知
覚などを扱ったPerception and Cognitionというセッションもある.今年は基
礎的なものはあまりなかったが,実験系の議論を呼ぶタイプの発表が多く,質
問マイクのところに特に長い列が伸びる議論が活発なセッションであった.
 アワードは,ペーパー,ショートペーパー,ポスターに関してBest award,
Honorable mentionの2件ずつ,Demoに関してはBest demo award1件で,計7件
であったが,ここではBest paperのみ紹介する.ドイツ,RWTH Aachen 大学の
Sebastian Ullrich & Torsten Kuhlenによる,“Haptic Palpation for
Medical Simulation in Virtual Environments”が選ばれた.Phantomを用い
た触診トレーニングシステムの開発で,2本指による触診に適したPhantom用パ
ッドと触診に関する新たな触力覚アルゴリズムの提案されていた.医療用アプ
リケーションは多く存在するが,提案手法の完成度が高い点と,十分かつ詳細
なユーザスタディをして応用可能性を示したことが評価されたと思われる.
 パネルは,Systems engineering scienceと,Brain computer interfaces
and VRに関するものの2件であった.1件目は,やや数が減りつつあるシステム
系の論文のあり方について熱い議論があり,2件目のBrain computerのもので
は,VRと密な関係にある事例がいくつか紹介され,あまり知識を持たない著者
にとっても十分理解でき興味深かい内容だった.
 著者は今回が2度目の参加で,今回はワークショップに少し関わった程度で
主に聴講であった.先にも少し述べたがアプリケーション系から基礎系のもの
までカバーされており,また論文の質が高い分,プレゼンや質疑も深く色々な
観点で刺激になり,多くのことを学ぶことができた.
 次回は,フロリダ州オーランドのWalt Disney Worldで開催される予定であ
る.アナウンス時にはかなり盛り上がっており,家族を連れての参加も呼びか
けていた.http://conferences.computer.org/vr/を参照.
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