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2024年6月25日

IEEE Haptics Symposium 2024

加藤 総真(電気通信大学)
 Haptics Symposium 2024は4月7日から10日の計4日間, アメリカのロングビーチにある
Hotel Mayaで開催された. 本学会ではTechnical Paperとして36件 (採択率59%). Transactions on
Haptics (ToH) Short Paperとして18件 (採択率40%), Demonstrationとして28件, Work-in-Progress
として34件が採択された.
 初日はCross-cutting Challengesというワークショップに相当するイベントが開催された.
本ワークショップにはFrontiers of Softness in Science and EngineeringおよびHaptics for
Impact: Consumer Value, Ethics, Diversityという二つのテーマが設定されており, 
主に前者では柔らかさの知覚や提示手法について, 後者では触覚が消費者に与える価値や影響
について議論された. 各テーマに対応するキーノート講演およびポスターセッションは午前と
午後で完全に分けられており, 参加者は両方のテーマに参加することができた. ポスターセッ
ションでは実機デモを行う発表者も多く, 最先端の技術に触れ, 話を聞くことができた.
 二日目以降はTechnical Paperの口頭発表や, デモ展示, Work-in-ProgressおよびToH Short Paper
のポスターセッションが行われた. 触覚の知覚や提示に関するものから医療やゲームへの応用ま
で幅広いテーマについて発表が行われた. 口頭発表では一人あたり12分の発表時間と2分の質疑
応答時間が割り当てられた. 質疑応答が2分というシビアな時間設定でありながら, あらかじめ
発表者がスタッフに資料を渡しておき, 発表用の共通のPCを用いて発表を進めることでスムーズ
な転換を実現していたのが印象的だった. デモセッションはポスターの前で実機デモを行う形式
で実施された. 非常に多くの人が参加しており, どの展示にも絶えず参加者がいる様子であった.
本セッションは計二日間に時間が設けられており, 内容は共通である. そのためデモ発表者も
一日は他の展示を見て回ることが可能であった. Work-in-ProgressおよびToH Short Paperのポス
ターセッションは屋外で行われた. こちらもまた多くの人が参加しており, 活発な議論が行われ
ていた. 私は“Presentation of a Tracing Sensation by Means of Rotation Stimuli”というタ
イトルで口頭発表およびデモ発表を行った. 本研究は回転する円板の中心に指先を接触させるこ
とで, 既存手法よりも大幅に小型なデバイスを用いてものをなぞった感覚を提示するというもの
である. 口頭発表の質疑応答では実験結果やユーザーが知覚する感覚に関する質問や考察, コメ
ントをいただいた. デモ発表では非常に多くの方に体験いただき, 提示された感覚に対するコメ
ントや今後の展望についての質問等をいただいた. なお, セッション間には小休憩が挟まれ, コ
ーヒーやクッキー, ケーキがふるまわれた.
 Closing CeremonyではTechnical Paper, ToH Short Paper, DemonstrationからBest Paper
(Demonstration), Distinguished Paper (Demonstration), Honorable Mentionが一件ずつ発表され,
表彰された(順に一位, 二位, 三位に相当). Technical PaperのBest PaperにはTummalaらの
“SkinSource: A Data-Driven Toolbox for Predicting Touch-Elicited Vibrations in the Upper Limb”
が選ばれた. 本論文は接触等によって手や腕に生じる振動を予測するツールであるSkinSourceを
提案するものである. ToH Short PaperのBest PaperにはKhojastehらの“Robust Surface
Recognition With the Maximum Mean Discrepancy: Degrading Haptic-Auditory Signals Through
Bandwidth and Noise”が選ばれた. 本論文は道具を用いて表面を探索する際の触覚および聴覚データ
について, ノイズを付加し頑健性を評価したものである. Best DemonstrationにはQuinnらの“A Shape-
Changing Haptic Device for 3D Pointing Guidance”が選ばれた. 加えて, 来年のWorld Haptics
Conference 2025 (Haptics SymposiumとWorld Haptics Conferenceは毎年交互に開催される) が
韓国の水原市で開催されることが発表された.

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