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2022年7月25日

メディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会(2022年6月開催)

武縄 瑞基(東京大学)
 電子情報通信学会のメディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会が2022年の6月16日から17日にかけて開催された.今回のテーマは「人工現実感,エンタテイメント,メディアエクスペリエンス」.本研究会は情報処理学会のHCI研究会やEC研究会との連催で,日本バーチャルリアリティ学会,映像情報メディア学会のHI研究会やSIP研究会,ヒューマンインタフェース学会のSIG-DeMOとの共催である.そのため,VRやデバイス系から支援システム作成や人への影響分析などさまざまな分野の発表が行われた.本研究会はCOVID-19の感染拡大予防のためにオン
ライン開催となったが,Zoomを用いた発表とSlackによる質疑応答を併用することによって,議論を可視化すると共に気軽に質問が行えるようにするという工夫が見られた.発表形式は15分の発表の後に5分の質疑が設けられる一般発表の他に,7分の発表の後に3分の質疑が設けられる萌芽発表があり,今回はそれぞれ30件と5件の発表が行われた.
 筆者は本研究会において「卓上直立空中像を4方向に提示する光学系における迷光低減手法の検討」という題目で,空中像を結像する再帰透過光学素子を卓面として卓を囲む4人のユーザに空中像を提示した際に発生する迷光を低減する手法を発表した.質疑では手法や実験に関する質問だけでなく,応用先や今後のデバイスの大型化など多角的な視点からのコメントがなされ,合同研究会ならではの経験ができたと感じている.
 興味深かった発表は萌芽発表の一つである,公立はこだて未来大学の竹川らによる「シースルー型HMDを用いた食べ物への映像効果重畳による食欲減衰手法の提案」である.この研究では早食いが肥満の原因であるという背景からゆっくり食べることを促す食事支援を目的として,シースルー型のHMDを用いて食べ物に色を重畳させることで食欲を減衰させて健康管理を促すことを提案していた.実験ではHoloLensを用いておにぎりに青色のフィルタを重畳し,フィルタをかけない場合と食がすすむごとに段階的に不透明度を高めた場合と初めから不透明度を100%にした場合の3つの条件で被験者に食事を行ってもらい,食後にアンケート調査を行っていた.実験結果より,段階的に不透明度を高めた場合が最も食欲が低下したことが確認された.一方で,被験者が少ないことや咀嚼の回数や食べ物に口をつける頻度などの具体的なデータを取ることが今後の展望として語られていた.質疑ではHMDを装着することによる食事の影響やフィルタをかけることによる視認性の影響について質問されており,今後の本格的な実験に向けた順序効果を避ける必要性の指摘など,萌芽的研究を発展させる有意義なコメントが見られた.
 本研究会は2022年9月8日と9日の二日間に次回の開催が決定されており,東京大学の本郷キャンパスとオンラインでのハイブリッド開催が予定されている.

公式サイト:https://www.ieice.org/~mve/

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