HOME » 学会参加報告 » IEEE VR 2022
2022年6月24日

IEEE VR 2022

松本 啓吾(東京大学)

 今年で20回目となるIEEE VR (IEEE Conference on Virtual Reality and 3D User Interfaces) が3月12~16日の5日間で開催された.当初はニュージーランドのクライストチャーチでのハイブリッド開催が計画されていたが新型コロナウイルスの変異株の影響により今年も昨年,一昨年に引き続きオンライン開催となった.
 オンライン会議では,Zoom,YouTube,Discord,iLRNが用いられた.Zoomは,主にワークショップや口頭発表で用いられ,聴講者は質問機能やコメント機能で登壇者に直接質問を行うことができた.YouTubeでは,Zoom上の発表が同時配信されており,会議参加者以外もほぼ全てのオーラル発表や基調講演を視聴することができた.また,同時配信された発表はYouTubeのIEEE VRチャンネルに登録され,いつでも発表を観ることができた.Discordでは,学会からの連絡事項の伝達や参加者間でのチャットベースでのコミュニケーションが行われた. iLRNではア
バタを操作してマップを移動しバーチャルカンファレンスホール上でインタラクションを行うことや,近くの参加者と音声通話を行ってコミュニケーションをとることができた.
 本会議では3件のKeynote,29件のJournal Papersと90件のConference Papers,181件のPosters,14件のResearch Demos,11件の3DUI Contest,5件のTutorial,20件のWorkshop,Doctoral Consortiumが行われた.今年のJournal Papersの採択率は15.3%,Conference Papersの採択率は21.5%であった.
 Keynoteは14日から16日の3日間にわたって行われた.14日のKeynoteではMonash UniversityのTim Dwyer氏が「Immersive Analytics and Embodied Sensemaking」と題した講演を行った.講演ではデータ可視化・没入型分析システムを概観した上で,Embodimentとセンスメイキングの関係を理解し人間同士の社会的協調を支援する感覚運動連関によるセンスメイキングであるEmbodied Sensemakingを発展させることがデータリッチな社会で効果的に働くための鍵になると述べた.15日のKeynoteではStaplesVRのAliesha Staples氏が「Making Business with Mixed Reality – The Story of StaplesVR」と題した講演を行った.講演ではSteplesVRがカメラ機材会社からニュージーランド初の世界的なAR/VRソフトウェア会社へと成長したストーリーが紹介され,全天周耐火カメラやサイバースキャン技術,VRトレーニングプラットフォームの取り組みについて説明された.最終日のKeynoteではUST ICT/NetflixのPaul Debevec氏が「Light Felds, Light Stages, and the Future of Virtual Production」と題した講演を行った.講演ではダウンロード可能なVirtual Reality Light Fields技術デモであるWelcome to Light Fieldsや撮影済みの全天周映像から一定の範囲を動き回ることが可能なVR映像を制作するDeepViewを紹介した上で,これらの技術を用いた最新の映像制作技術であるReal-world Image-based Lighting LED Stageについて説明された.
 Best Journal Paperには以下の3報が選ばれた.Zhang, et al. (Microsoft Research Asia) のVirtualCube: An Immersive 3D Video Communication Systemはあたかも対面で話しているかのような整合性のとれた視線となるようにユーザをリアルタイムレンダリングすることにより没入感のある3Dビデオ会議システムを実現している.Ebner, et al. (Graz University of Technology) のVideo See-Through Mixed Reality with Focus Cuesは視線依存のレイヤードディスプレイとカメラの焦点をずらしながら撮影した複数の画像であるFocal Stackを用いた可変焦点に対応したビデオシースルー型MRデバイスの提案を行っている.Martin, et al. (Universidad de Zaragoza) のScanGAN360: A Generative Model of Realistic Scanpaths for 360° ImagesはGANを用いて全天周画像に対する注視点の移動履歴であるスキャンパスを予測する研究を行っていた.
 本学会では日本人の活躍も目立った.奈良先端技術大学の清川清教授はIEEE VGTC Service AwardおよびTechnical Achievement Awardを受賞した.また,サイバーエージェントの小川奈美氏の博士論文「Effect of Self-Avatar Anthropomorphism on Perception and Behavior in Virtual Environments」は日本人初の快挙となるIEEE VGTC Virtual Reality Best Dissertation Award を受賞した.
 来年のIEEE VRは上海の浦東シャングリ・ラ ホテルで3月25日~29日にかけてハイブリッド開催される予定である.

公式サイト:https://ieeevr.org/2022/

Category: 学会参加報告