VRST2021
大西悠貴(東北大学)
12月8日(水)~12月10日(金)にかけて,The 27nd ACM Symposium on Virtual Reality Software and Technology (VRST2021)が開催された.VRSTが日本開催となったのは2018年に早稲田大学で開催されて以来,3年ぶりのことである.昨年の同会議はオンライン形式での開催であったが,今年は大阪の現地会場とオンラインを合わせたハイブリッド開催となった.現地会場である大阪大学会館には46名,オンラインでは144名,合計190名の参加者が集まった.大半の参加者がオンライン参加であったため,ペーパーセッションやデモ・ポスターセッションの発表は基本的にオンライン形式で実施され,現地会場は主にそれを聴講する場所としていた.オンラインツールとしては,全体的な案内にはDiscord,口頭発表にはZoom,デモ・ポスター発表にはGather.townが使われていた.また,ハイブリッド開催であることを考慮し,ポスターデモをツアー形式で回っている様子を現地会場に放映する等,現地会場・オンライン双方の参加者が楽しめるよう工夫がなされていた点も印象的であった.
ペーパーセッションでは,投稿された168件のPaperの内44件が採択され(採択率26.2%),この中から1件のBest Paperと3件のHonorable Mentionsが選出された.Best Paperに選出されたElorらのCatching Jellies in Immersive Virtual Reality: A Comparative Teleoperation Study of ROVs in Underwater Capture Tasksは,遠隔操作型の無人潜水機の操縦の臨場感を向上する手法を調査し,HMD装着状態での映像提示が周辺状況の認識やそれに伴う作業効率に貢献することを示した論文であった.Honorable Mentionsの1つであるAudaらのFlyables: Haptic Input Devices for Virtual Realityusing Quadcoptersは,3Dプリンタによるパーツを装着したドローンをVRのInput Modalityとした新たなインタフェースを提案しており,一般的なコントローラと比較して没入感の高い操作体験が実現されていた.また,52件のポスターと16件のデモ発表もあり,CommitteeによるBest Poster/Demo Awardが各1件と,参加者投票によるBest Poster/Demo Awardが1件選出された.
また,今回は2件の基調講演が開催された.初日はVR空間に3Dアートを描くVRアーティストとして国内外で活躍するせきぐちあいみ氏によるライブパフォーマンスがライブ配信され,同氏による近年のNFT作品や活用事例が紹介された.参加者からはアーティストに至った経緯や開発者視点で今後VRに取り入れたい機能に関して質問が挙がった.2日目には”Seamless Multimodal 3D Interfaces”というタイトルでSriram Subramanian氏(代理発表:Diego Martinez Placensia氏)による講演が行われた.非接触での入力を可能とする超音波インタフェースに関するこれまでの研究紹介を中心とした,マルチモーダルインタフェースに関する講演であった.
現地参加者向けのイベントとしては,大阪大学豊中キャンパスの5つの研究室を見学するラボツアーや,対面形式のポスター・デモセッションも開催され,少ない人数ながらも現地会場は盛り上がりを見せていた.筆者は今回Student Volunteer (SV) Chairとして主にSVの指揮を取りながら現地会場より参加していた.参加者としては,参加者間での議論や交流・デモ体験を通じて現地参加の良さを改めて感じたため,他の学会でも現地またはハイブリッド開催が検討されてほしいと感じた会であった.
来年のVRSTは,2022年11月29日(火)~12月1日(木)につくば国際会議場で開催される予定である.