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2021年12月24日

ISS 2021

工藤義礎(東北大学 )

 2021年11月14日(日)〜17日(水)の4日間にわたり,The 2021 ACM Interactive Surfaces and Spaces Conference (ISS 2021) が開催された.昨年開催されたISS2020はオンライン形式のみで開催されたが,今回はオンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド形式で開催された.現地会場はポーランド,ウッチにあるLodz University of Technology Campusだった.オンライン参加者はZoomを利用して会議に参加した.現地参加者は29名,オンライン参加者は53名であった.ISSでは初のハイブリッド形式での開催ということもあり,開始直後には音声トラブルが発生していたが,現地の司会者が質問者の発言を仲介してオンライン発表者に伝えたり,オンライン参加者が会場の様子をよく確認できるようにカメラワークを工夫したりと柔軟な対応が取られ,会議は概ねスムーズに進行した.また,オンライン発表者が無理のない時間帯に参加できるよう,発表時刻は発表者の参加地域のタイムゾーンに配慮し設定されていた.

 今年は77件の論文が投稿され,そのうち23件が採択となった(採択率29.9%).ISSは投稿の機会が1年で2回ある(Winter round,Summer round)が,それぞれの採択率はWinter roundでは21.1%,Summer roundでは32.8%だった.Winter roundでmajor revisionになった論文がSummer roundで採択されることが多いため,Summer roundの採択率が高くなったようである.採択された論文は11の国と地域から投稿されており,その中で採択件数がトップだったのは日本とカナダであった.デモ・ポスター発表はデモが2件,ポスターが7件であった.

 会議初日にはワークショップが行われ,2日目以降にキーノートやペーパーセッション等が行われた.現地では2日目と3日目に博物館を訪れるなどのソーシャルアクティビティも実施された.オープニングキーノートはUniversity Centre of Excellence DynamicsのWłodzisław Duch氏が担当した.タイトルは「Human enhancement and the future of BCI」であり,近年の脳活動の測定方法などに触れながらブレインフィンガープリント技術に関する講演であった.ペーパーセッションは合計で7セッションあり,1セッションあたり3-4本の発表が行われた.発表された論文の例としては,手の動きや姿勢をラップトップPCへの入力に使用した手法,手首のひねりを活用したスマートウォッチ上での数値入力手法といった入力インタフェースの研究に加え,近年普及の著しいHMDによるVR体験を取り上げ,HMD装着者と非装着者のコラボレーションを可能にする手法などの時流に合った研究もあり,幅広い分野にわたっていた.Best paperには,HMD装着者の近接者に対するアウェアネス向上とVR体験への没入を両立させることに取り組んだ,筆者らによるTowards Balancing VR Immersion and Bystander Awarenessと,視覚障害をもつ人でもボードゲームを遊べる方法を検討したLauren ThevinらによるInclusive Adaptation of Existing Board Games for Gamers with and without Visual Impairments using a Spatial Augmented Reality Framework for Touch Detection and Audio Feedbackが選ばれた.10 years impact awardsには,Lisa AnthonyらによるInteraction and recognition challenges in interpreting children’s touch and gesture input on mobile devices. (ITS ’12)が選ばれた.会議の最後には,Tampere UniversityのKaisa Väänänen氏が「Human-Centered AI for sustainability: Case Social Robots」というタイトルでクロージングキーノートを担当し,教育などで活用したソーシャルロボットの例を紹介しながら,Human-Centered AIのコンセプトや社会で持続的に利用できるAIデザイン方法論の講演を行い締めくくった.

 筆者はオンライン参加であったが,運営メンバーの多大な努力のおかげでとても楽しんで参加することができた.前例のない中で準備を進めるのは困難があったと予想されるが,そのような中でも素晴らしいカンファレンスを開催していただいたことに感謝を申し上げるとともに,今回の取り組みで得られた知見が広く共有されISSだけでなく他のカンファレンスにも活かされることを期待したい.

 来年のISSは11月20日(日)〜23日(水)にかけてニュージーランド,ウェリントンにて開催される予定である.

公式サイト:https://iss.acm.org/

Category: 学会参加報告