UIST 2021
山村亮介(mercari R4D)
ユーザーインタフェースに関するカンファレンスUIST2021は29ヶ国から565人の参加者を集めオンライン上で10月10日から10月14日の5日間開催された. CHI2021と同じく全体を3つのタイムゾーンに分け, 採択された著者はそのうち2つのタイムゾーンで発表することで世界中の参加者が時差を気にせず聞けるよう工夫されていた. 基本的なコミュニケーションはDiscord, 発表はZoom, ソーシャルミートアップなどはビデオチャットツールのOhyayで参加する形式であり, 昨年からの追加はOhyayぐらいで筆者としては違和感なく参加できた. またオーガナイザーの方々は参加者が迷わず発表リンクや議論に入れるようDiscord上で活発に動かれており個人的にはいい参加体験で筆者の所属するR4Dのイベントでも参考にしたい. ただプログラムはがタイムゾーンごとにセッション名や中の発表者が変更になるため重複して聞いてないかや聞き逃していないかをひと目で把握するのが難しく, 筆者のように企業所属で業務調整しつつ見る参加方法だと予定を組むのにかなり時間が取られた.
Paperの採択件数は95本で採択率は25.9%. Best Paper, Honorable Mentionsは共に3本ずつ選ばれた. 筆者の研究領域では今年はキーワードとしてレーザーカッターを使ったファブリケーションが注目を集めていたように感じた. UISTの発表動画はSIGCHIのYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/c/acmsigchi)で全て公開されているので研究を把握したい, 来年の投稿の参考にしたいなどあれば参照されたい.
筆者の研究領域に関わる発表を1つ紹介する. Apple/MIT CSAILのJ. GongらによるMetaSenseは変形を連続的にセンシングできる機能を付与する3Dプリント可能なメタマテリアルデバイスを提案している. 注意点としてHCIで使われるメタマテリアルは一般的にメタマテリアルとして認識されているものと違いメカニカルメタマテリアルと呼ばれるものである. 導電性のセル, 非導電性のセルで構成されるメタマテリアルデバイスが変形すると静電容量が変化するためこれを検知すれば変形を連続的にセンシングできる. 本研究ではさらにデバイスを設計するための3Dエディタを実装し, 変形シミュレーションを元に導電性フィラメントを最適な位置に配置すると共にマルチマテリアルのFDM方式3Dプリンタにインポートできるファイルを出力し, 3Dプリンタで印刷するというデザインとファブリケーションパイプラインも提案している. ただしFDM方式の特性上剪断強度が低く耐久性に課題があり, 特にMetaSenseでは導電性フィラメントと非導電性フィラメントを混ぜて使っているため弾性の違いからさらにせん断強度が下がる可能性がある. 筆者と東京大学筧研究室との共同研究でCHI2021 Interactivityで発表したソフトセンサfoaminでは同じく静電容量を使って変形をセンシングしているものの繰り返し使用に対する剪断強度に懸念が少ない導電性スポンジを使用した. MetaSenseは導電性スポンジと違い内部構造もデザインできデザインの自由度が増すため筆者は非常に刺激を受けた.
来年は10月29日から11月2日の日程でオレゴン州ベンドで開催される. CHIは今後ハイブリッド形式になっていくとのことでUISTもハイブリッド形式を期待したい.
公式サイト:https://uist.acm.org/uist2021/