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2021年11月2日

ヒューマンインタフェースシンポジウム2021

細野美奈子((国研)産業技術総合研究所) 
 本シンポジウムは新型コロナウイルス感染症の影響により,昨年に引き続きオン
ライン形式で9月15日から17日までの3日間開催された.シンポジウムでは,従来の
ポスター発表に代わりoViceを利用した仮想空間でのアバターを利用した対話発表
92件のほか,Zoomによる討論発表16件や特別講演,講習会,ワークショップが例年
通り実施された.
 特別講演では,Parsons School of DesignでDesign Researcher,Educatorをつと
めニューヨークを拠点に活躍されている岩渕先生から未来学のテーマのもと様々な
取り組みをご紹介いただいた.「考えること」自体を目的とする取り組みを通じて
Positiveな未来実現のためにビジョンをデザインすることの重要性を挙げられてお
り,取り組みの例として,Speculative Designの手法を用いて「こんな未来はどう
か」というイメージやビジョンをもとに望ましい/望ましくない未来を議論し,待
ち構えているかもしれない未来を発見するという思考プロセスの話や,一見よく分
からない絵を見て解釈を練り(ご講演では2枚の写真が例としてピックアップされ
た.まさしく文章では何とも説明しにくいが,私には1枚はゲゲゲの鬼太郎,1枚は
星新一先生のおーいでてこーいを想起させるものだった),人と共有することで自
分の興味の範疇外にまで思いをはせるImagination muscle trainingの話を取り上げ
られた.聴講者も共に考え想像しながら進むスタイルだったこともあり,想像力を
フルに活用してimagination muscle trainingを実体験するような講演内容だった.
 討論発表は口頭発表15分+質疑応答15分の充実した時間割となっており,使い慣
れたオンライン会議ツールのもと活発な議論が行われた.一方,対話発表では今回
初めてoViceを利用したシステムがシンポジウムで採用された.発表者側としては資
料や音声の共有設定に手間取った面もあったが,発表者としても聴講者としても総
合的に従来のオフライン会場でのポスター発表と遜色がない,もしくはそれ以上の
形で参加することができたと思う.まず,画面共有の形で発表者は聴講者に様々な
資料を提示することができるため,質問に対する回答や議論を従来よりも深く実施
することが可能となった.さらに,発表者とリンクのつながった聴講者には全ての
音声と資料がクリアに届くため,活況のために聞きづらかったりポスターが見えに
くかったりするような従来のポスター会場でよく発生した困りごとは起きなかった.
また,見たいポスター発表の前まで2クリックでワープすることもできたのはとて
も便利だった.会場全体を見渡して雰囲気を感じ取るようなことは現地開催と異な
り出来なかったが,発表者・聴講者双方の立場から参加してみて,どのセッション
でも非常に活発な議論が交わされたと感じる.実機のデモンストレーションや学会
ならではの人との交流を楽しむという意味では,まだまだオンラインには向き不向
きがある印象を受ける.しかし,福祉や高齢者の支援機器の開発研究に取り組む一
員として,進歩した,もしくは新しいツールを利用することによって,従来方法の
不便な点に改めて気付いたり課題が明らかになったりするという貴重な体験をする
ことができた.実行委員の先生方やスタッフの皆様に心から感謝したい.
 新型コロナウイルス感染症のために先行きはいまだ不透明だが,来年9月に予定さ
れているヒューマンインタフェースシンポジウム2022も無事に開催されることを切
に願うとともに,心より開催を楽しみにしている.
公式サイト:https://jp.his.gr.jp/symposium/symposium2021/ 
Category: 学会参加報告