SIGGRAPH2020
矢作 優知(東京大学)
2020年のSIGGRAPH (https://s2020.siggraph.org) はオンラインイベントとして
開催された.まず初めに,困難な状況の中でも素晴らしいイベントの開催に向けて
尽力してくださった全ての方々に感謝申し上げたい.さて,SIGGRAPHはコンピュー
タグラフィックスとインタラクティブ技術に関する国際会議・展示会であり,最新
の研究成果の発表のほかにComputer Animation Festival など映画作品に関するイ
ベントなども行われる.47回目となる今回のSIGGRAPHはワシントンD.C.での開催が
予定されていたが,COVID-19の影響で初のオンライン開催となった.まず8月17日
に会場となるサイトがオープンし,事前に収録されたオンデマンドコンテンツを閲
覧する期間が1週間設けられた.続く8月24日からの5日間が例年のイベントに相当
する期間として設定され,インターネットを通じてインタラクティブなセッション
などにリアルタイムで参加する期間となっていた.さらに,各コンテンツは10月27
日まで引き続き閲覧可能となっている.2週間の間に,400,000回のストリーミング
再生があったことが発表されており (https://twitter.com/siggraph/status
/1301565666684698624),バーチャルイベントとなっても多くの人がSIGGRAPHに参
加したことがうかがえる.
今回のバーチャルイベントはhubb上にて催され,各発表にはそれぞれ1つのペー
ジが割り当てられた.SIGGRAPHには様々なプログラムがあるが,多くはプレゼン
テーションをオンデマンド配信し,Q&Aをリアルタイムで行うという形式であっ
た.Technical PapersやCoursesについては自分のペースで聴講でき参加しやすい
と感じた.各発表を30秒で紹介するTechnical Papers Fast Forwardはオンライン
でも開催され,興味深い研究に出会う良い機会となっていた.個人的に興味深いと
感じた研究として,SongらのFDMの3Dプリンタでフルカラーのグラデーションを表
現するための,ディスプレイによる色表現に着想を得たという各レイヤを複数色の
層に分割してそれぞれの高さの割合を変えることで色を表現する手法の提案がある.
筆者らはEmerging Technologies にて再帰透過光学素子により表示される空中像
の画質劣化を補正するViPlateについて発表した.例年のEmerging Technologiesは
体験型の発表であるが,今年はこれを可能な範囲で模した「カルーセル形式で各展
示を見回ることのできるExperience Hallでのオンデマンドデモビデオ展示+リアル
タイムでのプレゼンテーションとQ&A」という形式で発表が行われた.質疑応答の
セッションでは,4件の発表に対してまとめて質問をする形式がとられた.質問内
容はチャットで送られる上,質問を確認してから回答するまでに少し余裕があるた
め,英語の非母語話者としてはとても参加しやすいと感じた.一方で,質問者の回
答に対する反応がわからないという点は課題であると感じた.初めての学会参加で
あったが,発表前に司会の方が雑談などをして和やかな雰囲気を作ってくださった
ため,過度に緊張することなく参加できた.
来年のSIGGRAPHはロサンゼルスにて2021年8月1日から8月5日の期間で開催予定で
ある (https://s2021.siggraph.org) .来年の開催時期には現地参加も可能な状況
となっていることを期待したい.
公式サイト:https://s2020.siggraph.org/