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2020年7月13日

メディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会研究会(2020年6月)

覚井 優希,下野 明佳里(東京大学)

 情報処理学会のEC研究会が主幹事の合同研究会が2020年6月1日と2日の2日間に
渡って開催された.本研究会は東京大学工学部2号館にて開催予定であったが,新
型コロナウイルスの感染拡大防止のためオンラインでの開催となった.本研究会は
電子情報通信学会のMVE研究会やHCI研究会との連催であり,VR学会やHI学会の
SIGDeMo,映像情報メディア学会のITE-SIPとの共催である.そのため発表のテーマ
は,画像処理やXR関連のものから行動分析・教育支援に関するものまで多岐にわ
たった.発表総数は2日間で34件であった.
 本研究会において我々は,「YouTubeサムネイルの自動生成手法の提案とその評
価」という題目で発表を行なった.この研究では,近年人気が高まりつつある
YouTuberに着目し,視聴者の関心を引くような,より魅力的なサムネイルの自動生
成手法を提案した.具体的には,人気YouTuberのサムネイルに多く見られた,1)
表情豊かな YouTuber 本人が写っていること,2) 動画の主題となる物の画像が
写っていること,3) 内容を端的に表す文字列が挿入されていること,の3点の再現
を目標として,魅力的なサムネイルの自動生成ツールを実装した.また,クラウド
ソーシングサービスを用いた比較評価の結果も示した.本研究会での発表が我々に
とって初めての学会発表であり,また,オンラインでは聴講されている方々の反応
が見えづらいということもあり,不安に思う面もあった.しかし,発表後に参加さ
れた先生方から分かり易く興味深い発表だったとの評価をいただき,安堵するとと
もに喜ばしく思った.なお,本研究に関する論文はMMArt-ACM ’20にも採択され,
今年の10月にアイルランドにて発表予定である.今回いただいたご質問やコメント
をもとに,次学会での発表に向けて内容をブラッシュアップしていく所存である.
また,論文執筆時から精力的にサポートいただいている山﨑俊彦先生に改めて感謝
を申し上げたい.
 続いて,本研究会での発表の中から面白いと思った発表を2件紹介する.1件目
は,東京大学の窪田開氏,福里司氏,五十嵐健夫氏による「プログラミング教育に
おける間違い探し問題の自動生成」である.この研究では,現在のプログラミング
教育において主流となっている空欄補充問題では学ぶことのできない,バグを処理
する力を養うことに焦点を当てた.そして,間違い探し問題が有効なのではないか
というアイデアのもと,間違い探し問題の自動生成手法を提案した.全体の処理と
しては,学習内容を選択し,重要度の計算結果に基づいてエラーを挿入する箇所を
決め,ルールに則りエラーを作成する,という流れである.空欄補充問題と間違い
探し問題では求められる能力が異なるため,用途に応じた使い分けが必要であると
の結論であった.質疑では,実際にプログラミング教育をされている方々を中心
に,様々なコメントがなされていた.2件目は,駒澤大学の服部圭介氏,平井辰典
氏による「自己位置推定可能な複数のデバイスを用いた操作を可能とするインサイ
ドアウト方式のXR用コントローラの提案」である.この研究では,既存のVR/AR用
コントローラに操作範囲の限界があることに着目し,コントローラデバイスにイン
サイドアウト方式の画像認識ができるカメラを取り付ける手法を提案した.発表中
に紹介されたデモにおいては,画角の範囲外であってもコントローラを用いた円滑
な描画操作が実現できていた.その一方で,ネットワークの遅延も散見されてお
り,その遅延を減らすことや,新たな画像認識方式を用いてシステムの高速化を図
ることなどが今後の展望として述べられていた.質疑においては,VRやARを研究分
野とされている研究者の方々を中心に,提案手法に対して活発な議論がなされてい
た.
 本研究会への参加を通して,我々の研究に関連する分野は勿論のこと,それに限
らず多様な分野の研究に触れることができ,知見が大きく広がったように感じる.
 次回のMVE研究会は,2020年9月8日から2日間,オンラインにて開催予定である.

公式サイト:https://www.ieice.org/ken/program/index.php?tgid=IEICE-MVE

Category: 学会参加報告