EC2019
杉本実夏(筑波大学)
2019年9月20日から22日にかけて,エンタテイメントコンピューティング2019が九州大学大橋キャンパスにて開催された.17回目である今年のテーマは「SDGs」.発表は,口頭発表ロングが20件,口頭発表ノートが48件,デモ発表が73件(口頭発表も行うものがうち36件)行われた.
会期中は3日間の口頭発表に加え,1日目には招待講演,2日目には「心を動かす情報学ワークショップ」,2日目と3日目にデモ発表が行われた.デモ発表では多くの人がデモを体験し,特に人気のあるデモ発表では順番待ちの列が出来るなどにぎわっていた.
ベストペーパー賞(ロング)には白井良成氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)らによる「World Wide Webのゲーム化とその効用」が選ばれた.これはWWW上の文字列を擬人化してWebサイトを奪い合うゲームと,これを題材にWWWをゲーム化する方法とその効用,課題について議論した研究であった.
印象に残った発表は,ベストデモ賞(一般投票)とベストビデオ賞を受賞した木川貴一郎氏(立命館大学)らの「HaptoBOX:複合現実体験を増強する多感覚型インタフェースの研究(2) インタラクティブ機能の拡張」である.HMDを装着してマーカーがついている箱状のデバイスを手にとると,連動している映像と音、振動によってその箱の内部に仮想物があるように感じられるものであった.体験してみると,仮想の心臓が拍動する様子が映像と連動した鼓動音,拍動の振動から感じられ,箱を手にとって自由な視点から眺められる体験も合わさって,よりリアリティの高い体験に感じられた.
発表だけでなく,招待講演やワークショップも非常に魅力的だった.吉田真也氏と猪口大樹氏による「STRIKE YOUR IMAGINATION ~心を動かす“体験”をデザインする~」と題した講演では,魅力的な多数の映像を使って具体的な事例を紹介いただきながら,それぞれの体験をデザインする際に考えたこと,辿ったプロセスなどを伺った.体験の作り方や伝え方としてお手本にしたい取り組みが多く,研究内容の見せ方としても大変参考になるとともに内容も非常に面白かった.2日目の「心を動かす情報学ワークショップ」においては,Qualificationの詳しい説明が行われ,どのようにエンタテイメントコンピューティング研究を行っていけば良いのかについて等の議論が活発に行われた.
3日目はあいにくの台風の接近に伴い,午後に予定されていた山元隼一氏による招待講演は残念ながら中止となってしまったが,最終日の午前中いっぱいまで行われた口頭発表やデモ発表では最後まで活発に議論が行われた.また,発表に並行して行われていたオーガナイズドゲームで使用されていたslack上では,発表に関する質問用のチャンネルも作られ,発表が終わった後も参加者からコメントや質問を受けることが出来たのは大変良かった.
次回は,2020年の夏に名城大学での開催が予定されている.