SIGGRAPH 2019(発表)
宮藤詩緒(東京工業大学)
今年のSIGGRAPH(https://s2019.siggraph.org)はLos Angeles Convention
Centerで7月28日から8月1日の5日間にわたり開催された.SIGGRAPHは毎年北ア
メリカで行われるコンピュータグラフィックスとインタラクティブテクニクスに関
する国際会議であり,例年15,000人を超える参加者が集まる.第46回目となる今年
のSIGGRAPH 2019では18,700人の来場があったと報告されている.
会場は,西ホールと南ホールの2つのパートに分かれており,西ホールではTech-
nical Papersやレクチャー等の登壇系発表,南ホールではEmerging Technologies,
VR Theater,企業ブース等の展示系発表が行われた.西と南のホールは室内で繋が
ってはいるが,歩いて移動するには5分かかる.SIGGRAPHではトップカンファレ
ンスとしての学会発表のみならず,Emerging Technologiesのデモ展示や企業展示,
そしてアートやデザイン分野の展示も楽しめる.となると,自ずと南ホールでの活
動時間が増えてしまい,西ホールまで歩くのが億劫になってしまう.そんな時に重
宝するのが南ホール内に設置された写真のGeek Barである.このGeek Barと呼ば
れるブースでは大画面に8セッション分の発表会場の様子が中継されており,手元
のレシーバ付きヘッドホンで音声を選択,視聴することができる.ブース内には約
30個のビーズクッションと10台程のソファ等が用意されており,連日沢山の参加者
が発表を視聴していた.筆者はPoster発表とEmerging Technologiesでの手伝いな
ど南ホールでの仕事が多く,2日目までは発表会場でプレゼンを見たが,それ以降
はGeek Barにお世話になった.登壇者への質問は不可能だが,セッション途中で
も他セッションの発表にチャンネルを変更したり,発表をザッピングしたりと,
より効率的に発表を視聴することが出来る素晴らしいシステムだと感じた.
学術発表であるTechnical Papersの採択数は111件(採択率28.8%)で,発表は32
のセッションに分かれていた.そのなかでも興味深かったのは,Photo Scienceセッ
ション内で聞いたShihらのDistortion-Free Wide-Angle Portraits on Camera Phones
という発表だ.これは,携帯端末の広角カメラで写真を撮る際,写真端にいる人物
の顔の歪みを補正するアルゴリズムに関する研究である.広角カメラで撮影した画
像から顔領域と背景領域を分け,それぞれにステレオグラフィック投影,パースペ
クティブ投影による補正を行うワーピングメッシュを作成し,顔領域の歪みのない
写真に補正をするというアルゴリズムであるが,異なる補正領域の境界で起こる直
線の歪み(「時空の歪み」と揶揄される部分)も対称部分のメッシュをスケーリン
グすることで解決している.論文ではQualcommのSnapdragon 845を搭載した端末
が用いられており,12MPixelの画像を920msで補正可能と記述されている.本手法
が端末に標準搭載され,歪みのないセルフィーを楽しめる日も近いだろう.
その他にもPixarによるToy Story 4やMarvels StudioによるAvengers: Endgameの
製作過程に関するパネルトークなど,エンターテイメント性の高いトークも多く,
飽きることなく5日間の学会期間を終えた.来年のSIGGRAPHはアメリカのワシン
トンD.C.で開催される.
公式サイト:https://s2019.siggraph.org