ISMAR 2018 参加報告
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◆ ISMAR 2018
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澤邊 太志(奈良先端科学技術大学院大学)
今年のISMARは,去年度のフランスに続くヨーロッパでの開催となり,ドイツのミュンヘンにあるMOCという会場で,2018年10月16日から20日まで開催された.また,この会場では,AWE (Augmented World Expo) も同時開催されており,企業によるVR・ARを用いた商品のデモブースが多く展示されており,技術応用を体験することができた.
学会の主な内容として,基調講演2件,スポンサー企業講演1件,論文発表33件(8セクション),ポスター発表31件,デモセッション28件,Workshops 6件,Tutorials 4件が実施された.
基調講演のHenry Fuchs教授 (University of North Carolina at Chapel Hill) の話では,50年のVR・ARの歴史の説明から,自身のUNCでの研究として,遅延が少なく,高輝度,高視野をもつARディスプレイシステムに関する取り組みが広く紹介されていた.もう一つの基調講演として,Hrvoje Benko氏 (Research Science Manager at Facebook Reality Labs (FRL)) による講演では,企業の研究部門の視点からVR・AR分野に関する様々な事例を紹介していた.その中でも,今までのVR・AR を用いたコンテンツにおいて現実的という点が重要とされていたが,AR技術によるインタラクションをする際には,「常に現実的な事が必ず良いとは限らない (Realistic is not always better)」という言葉が印象に残っている.スポンサー企業講演では,Apple社のARKitやAnimojiの紹介などが行われていた. 今回のBest Paper AwardとなったPraneeth Chakravarthula氏らによるARと焦点に関する研究では,リアルとバーチャルの物体に自動的に焦点が合うARメガネの研究がとても興味深く,産業分野における応用への可能性が高いものでもあった.
筆者が発表したCIAV2018では,VR分野では珍しい自動運転とVR・ARに特化したワークショップであり,日本の研究者やTUM(ドイツ)の研究者の講演において,自動運転時の快適な情報提示手法やAR技術を用いた快適性向上の手法などの提案に関する講演が行われており,今後の自動運転について議論することができた.
全体を通して今回のISMARでは,産業分野やエンターテイメントにおけるOculus GoやHoloLensを用いた研究やデモが多く,その場ですぐに体験できるという点が特徴的であったが,長時間の利用などを考えた際の装着者に対する快適性やVR酔いなどの観点での研究が少なかったかと思われる.さらに,今回のISMARでは,初となるTwitchを用いたライブストリーミングを実施し,会場に参加できなくても,公聴できる仕組みを取り入れるという新しい試みも見られた.
クロージングセッションではISMAR2019が北京(中国)にて開催予定であると発表された.また,IEEE VR2019が大阪(日本)で開催されることも併せて伝えられた.