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2018年7月25日

人工現実感研究会 参加報告

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 ◆ 人工現実感研究会
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成瀬 加菜(東京大学)
 最初の電子情報通信学会メディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会(MVE)は6月14日
・15日の2日間にわたり,東京大学福武ホールにて開催された.今回のMVEは「人工現実感,エンタ
テインメント,メディアエクスペリエンス」に関する研究報告を目的とし,電子情報通信学会ヒュ
ーマンインフォメーション研究会(ITE-HI),情報処理学会HCI・EC研究会,ヒューマンインタフ
ェース学会SIGDeMOの併催という形式で行われた.
 本研究会は,1日目は「ジェスチャ・姿勢」「コミュニケーション解析・設計」「観光ガイド」「
身体性」「その他1」の5セッション,2日目は「聴覚刺激」「タッチ・咀嚼」「可視化」「その他2
」の4セッションで構成され,2日間を通して計27件の発表が行われた.また,研究会中には質疑の
活発化を図った掲示板システムの試用実験が並行されており,いずれのセッションでも活発な議論
がなされ,新たな評価視点への着目が促進された.
 まず筆者が興味を惹かれたのは,咀嚼運動に作用するインタフェースに関する研究発表が2件行わ
れたことである.鈴木らの「誇張した咀嚼運動の映像提示による食感知覚操作に関する基礎検討」
では顔認識と画像変換を用いてユーザの咀嚼運動を誇張した映像を生成し,食品の噛み応えや咀嚼回
数の変化が調査された.正月らの「センサを用いた偏咀嚼防止及び咀嚼回数促進の検討」では,マ
イクや筋電位センサなどを用いてユーザの偏咀嚼を検出し,左右バランスよく噛むように警告音で
促すというインタフェースの開発を行っていた.偏咀嚼を検出するセンサの開発者も質疑に参加す
るなど,専門家による直接のフィードバックが行われる場面もあった.いずれの研究内容も食生活
の改善や食育への活用が大いに期待されるものであった.
 その他に筆者が特に興味を持った研究発表として,辻らの「手遊びのハンドジェスチャを用いた3
Dモデル操作手法」を挙げる.これは手の動きをキャプチャし,3Dバーチャルモデルの動きと連動さ
せる手法の提案である.発表中には数種類のモデルを用いたデモ映像の上映も行われた.
 また,VR空間内における体験の充実を図った研究成果も幾つか報告された.小宮山らの「VR空間
内におけるアバタとの視線コミュニケーション」では,アバタを介したコミュニケーションに視線検
出機能を有するHMDを使用することにより,視線情報をHMDの向きで代用する場合と比較しアバタと
の空間共有感が有意に向上することが明らかにされた.市川らの「VR空間におけるジェスチャを用
いたNatural User Interfaceの研究」では,VR空間での没入感や操作性の向上を狙い,手招き
や足踏みなどのジェスチャ認識を空間操作に使用していた.
 筆者らは2日目の「聴覚刺激」のセッションにおいて,入力された音声に変換処理を施し,ユーザ
にフィードバックすることで口頭発表時の緊張感軽減を図るインタフェースに関する発表を行った.
質疑では,緊張への他の対処法との比較や緊張感に影響する要因などについて議論し,貴重なコメン
トを数多くいただくことができた.
 人工現実感をテーマとしたMVEは例年東京大学にて開催されているが,次年度の開催日程等は未
定であり,今後公式サイトにて告知される予定である.2018年度中のMVEは今回のほか,2018年9
月6日・7日には大阪工業大学にて「魅力,食体験,メディアエクスペリエンス及び一般」をテーマ
に,2018年10月25日・26日には北海道大学にて「新しいエクスペリエンスを目指すものづくりおよ
び一般」をテーマに,また2019年1月17日・18日にはオムロンにて「AR/VRのためのPRMU技術」を
テーマに開催予定である.

研究会URL: https://www.ieice.org/~mve/

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