APMAR2022
大塚真帆(奈良先端科学技術大学院大学)
14回目となるAsia-Pacific Workshop on Mixed and Augmented Reality 2022(APMAR)が2022年12月2日から12月3日の2日間にわたり開催された.本会議は,2008年に始まったKorea-Japan Workshop on Mixed Reality (KJMR)の後継にあたり,アジア・オセアニア地域における複合現実感(MR)に関する研究の成果報告と国際交流を目的としている.COVID-19感染拡大状況を踏まえ,昨年はオンライン開催となったが,本年は慶應義塾大学日吉キャンパスにてハイブリッド形式で開催された.また,Slackを用いた質疑応答スペースを設けることで,議論の活発化が図られた.本会議への参加者は65人に上り,2件の基調講演と31件の論文発表(内Full Paper 9件,Short Paper 4件,Pitch your work 18件)が実施された.クロージングセッションでは,Best Paper Award1件,Best Short Paper Award1件,Best Presentation Award3件が発表された.
1件目の基調講演では大阪大学の岩井 大輔 准教授により,”Projection mapping technologies for permeation of digital flexibility into the physical world”と題する講演が行われた.プロジェクションマッピングは,現実と仮想をシームレスに融合するMRを実現するための有力なツールである.本講演では,プロジェクタの被写界深度の浅さなどの課題を解決する技術の紹介や,プロジェクションマッピングによる拡張現実における課題を解決する最新の試みについて紹介された.
2件目の基調講演ではKorea UniversityのGerard J. Kim教授により,”XR, Metaverse and Standards”と題する講演が行われた.本講演では,来たるメタバース時代において,標準規格がどのような重要な役割を担っているのか講演された.さらに,XR,メタバースを普及させるために必要な規格について言及された.
論文発表の内容は,VR酔いに関する研究,三次元形状復元技術に関する研究,XR技術を活用した支援システムに関する研究など多岐に及んでいた.ヒトの認知への影響に着目した研究やVR技術やAR/MR技術の実応用を見据えた具体的な課題に取り組んでいる研究が多く見られたように思う.
筆者は,Full Paperのセッションで”An AR Visualization System for Carbon Dioxide Concentration Using Fixed Sensor and Sensors Mounted on Mobile Robots”と題する発表を行い,本年度のBest Paper Awardに選出された.これは,三次元計測した室内のCO2濃度をAR-HMDを通して可視化する研究である.本来は見えないCO2濃度の状態や変化が見えることで,室内空気が淀みやすい時間や場所の把握に役立つ.
本会議への参加を通して,自身の研究に関する分野に限らず,他の分野の研究に触れることで多くの刺激を受けることができた.国際会議での発表は初めてであり,COVID-19感染拡大の影響により現地での発表経験も少ないため緊張したが,結果として自信に繋がる非常に良い経験となった.
来年のAPMAR2023は2023年8月20日頃に台湾にて開催される予定である.
APMAR2022 Webサイト URL: http://apmar.net/2022/