CHI PLAY 2021
濱田健夫(東京大学)
ゲームや遊び全般に関するHCIの国際会議であるCHI PLAY 2021は,2021年10月18日から21日にかけてオンライン開催された.本年からの大きな変更点として,査読のプロセスが一新され,採択されたフルペーパーはCSCWやISSと同様にACMのジャーナルの一つであるPACMHCIにて出版されることとなったことが挙げられる.これは近年ますます多様な分野から論文投稿がなされてきた状況を鑑みての対応とのことである.参加登録者は6大陸33の国より300名を超えたが,その多くがアメリカとカナダからの登録であり,日本からは3名のみであったことは残念に思われた.投稿されたフルペーパー250件中64件が採択され(採択率25.6%).その中からHonorable Mention Awardsとして8件が選出された(Best Paper Awardは設定なし).
著者は投稿論文が不採択となった都合上聴講での参加となったが,Honorable Mention Awards受賞論文のうち特に印象に残った、アメリカPurdue UniversityのKaoらによる「The Effects of a Self-Similar Avatar Voice in Educational Games」について紹介する.この研究ではアバターの見た目ではなく声に焦点を当て,自身の声との類似性が教育用ゲームの体験に与える影響を検証した.声の類似性は自身もしくは他人の声を基に合成音声を作ることで調節され,さらにピッチシフト(音程の変調)の有無やその方向(高くする/低くする)についても考慮された.自身が動きを操作するアバターにて検証した結果,音声の類似性がゲームのパフォーマンス,滞在時間,類似性の識別,モチベーション,没入感において有意な増加をもたらすことを確認した.一方で今回実施した20Hz程度のピッチシフトでは差は確認されなかった.これらの結果から,音声アシスタントやVRでのプロテウス効果などにおいて,声の類似性による体験の向上が望めるだろうと結論付けられた.
本会議は来年はドイツ・ブレーメンでの開催が予定されている.詳細については以下のウェブサイトを参照されたい.
公式サイト:https://chiplay.acm.org/2022/