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2021年8月25日

HCII 2021

岡 時生(電気通信大学)
 今回のHuman-Computer Interaction International 2021(以降HCII 2021)は全てオンライン上で,7月24日(土)から29日(木)の6日間開催された.HCII 2021では81カ国のアカデミア,研究機関そして産業界から5222の論文とポスターが提出され,1442の論文(内166本はLate Breaking Work)と385のポスター(内144枚はLate Breaking Work)が299のセッションで発表された.また,発表のセッションと並行して33個のTutorialsが執り行われた.初日の基調講演には東京大学の廣瀬教授が招かれ,コロナパンデミック以前のVRの歴史とコロナ禍の今とこれからの社会で通用し求められるVRについて紹介した.HCII 2021では21個あるテーマ毎にBest Paperが選ばれた.Virtual, Augmented and Mixed RealityのテーマではKamalasananらによる “Exploratory Study on the use of Augmentation for Behavioural Control in Shared Spaces” という論文が選ばれた.これは,シェアードスペース等信号機が無い道路を想定し,歩行者に対しARで信号を提示することにより,歩行者の行動にどのような影響を与えるか調査したものであった.ここで,同テーマで興味を持った発表の1つである,Ericksonらによる “Beyond Visible Light: User and Societal Impacts of Egocentric Multispectral Vision” という論文について紹介する.この研究は,発熱者を発見する用途など,既に他の分野で使われている赤外線カメラや紫外線カメラに焦点を当て,将来的にHMD等に搭載された際に,専門的な領域にとどまらず,一般的な用途としてどのような用途があるかを調査することを目的としたものであった.実際にはHoloLens1をベースに赤外線カメラと紫外線カメラを2台ずつ取り付け,リアルタイムで赤外光又は紫外光における視界を合成するというプロトタイプが作製され,その使用用途の調査が行われていた.その他様々なテーマで様々な研究が発表されていたが,その中で,筆者らは “Effects of Interpupillary Distance and Visual Avatar’s Shape on the Perception of the Avatar’s Shape and the Sense of Ownership” というタイトルで発表を行った.これはアバタの腕や脚の長さ及び,人間の眼間距離に相当するHMDに出力する映像を撮るソフトウェア上の2台のカメラの間の距離を変化させた際のアバタに対する所有感や形状知覚の変化について調査した研究である.今回発表された論文の中には“COVID-19” や “パンデミック” という単語がタイトルに入っているものがいくつか見受けられ,世風を反映しているようであった.私自身,初の国際学会参加であった為,オンライン上で開催されたことは仕方なくも少なからず残念な事であったが,日本の研究者を含め世界で多くの研究者が様々な研究を行っているという事を改めて実感し身が引き締まる思いであった.HCII 2021はオンライン開催であったが,次回のHCII 2022は状況によってはスウェーデンのヨーテボリで開催される予定である.
公式サイト:http://2021.hci.international/

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