IEEE World Haptics Conference 2019
崎山恵美理(東京大学)
IEEE World Haptics Conference 2019が,2019年7月9日から12日にかけて4日間,
東京の御茶ノ水にて開催された.World Haptics Conferenceは2年に1度開催される
世界中の触覚研究者が集まる国際会議である.106件のtechnical paperが採択され,
Work-in-Progressは90件,デモ展示は65件であった.今回のtechnical paperの発表
では,3分間の口頭発表とポスターやモニターを用いた120分間のインタラクティ
ブセッションとの両方を組み合わせた新たな形式が取られ,各国から740人の参加
者が集まって活発に議論が行われた.
Best Paper Awardには,Xiao Xuらの”Elimination of Cross dimensional Artifacts
in the Multi Dof Time Domain Passivity Approach for Time delayed Teleoperation
with Haptic Feedback”が選ばれた.時間遅延のあるテレオペレーション体験の安定
化にはTDPAという手法が有効とされるが,今回の研究ではこれを1自由度から多
自由度に拡張した場合の問題について考察し,新たな多自由度TDPAを提案した.
これによって,テレオペレーションのユーザエクスペリエンスの向上が期待される.
また,Best Demostration AwardにはBharat Chandrahas DanduらFacebookの研
究グループによる”Demonstrating Spatiotemporal Haptic Effects from a Single Actu-
ator via Spectral Control of Cutaneous Wave Propagation”が選ばれた.本デモでは,
皮膚表面の波の伝搬の測定結果をもととした触覚設計により,単一アクチュエータ
によって指先に振動が空間的に広がる,あるいは縮んでいくような触覚体験を可能
とした.
なお,本会議ではFacebookからこのほか40名弱の著者らによる論文が採択され,
所属機関別の論文著者数で2位の東京大学(約20名)を押さえて最多となり大きな存在
感を示した.デモのAwardにノミネートされていた”Tasbi: Multisensory Squeeze
and Vibrotactile Wrist Haptics for Augmented and Virtual Reality”も同じくFacebook
の展示であり,圧迫と振動を用いたAR/VR用のリストバンド型触覚デバイス”Tasbi”
を体験するために長い行列ができていた.今回は全体の傾向としてこのようなウェ
アラブルデバイスやアクチュエータに関する研究が多く見られた印象がある.
今年は本会議で歴代最多となる700名超の参加者が集まり,非常に大きな賑わい
を見せた.筆者としても初めて参加した国際学会であり,世界各国の触覚研究者の
発表に触れ,また自分の研究に関して様々な意見をいただき大いに刺激を受けた.
2021年開催予定の次回IEEE World Haptics Conferenceについてもますますの発展
を期待したい.
公式サイト:http://www.worldhaptics2019.org/