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2016年9月26日

第26回人工現実感研究会 参加報告

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|◆ 第26回人工現実感研究会 参加報告
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犬飼和真(大阪大学)
 2016年7月20日より東京大学山上会館にて,人工現実感をテーマとした研究発表
会が行われた.毎年開催される研究会ではあるが,今年度より新たな発足としたヒ
ューマンインタフェース学会SIG-DeMO研究会にとっては記念すべき第一回目の研究
発表会となった.SIG-DeMO研究会は,Device Media Oriented UI の頭文字4文字か
ら名付けられ,ヒューマンインタフェース学会SIG-VR研究会を前身とし,よりデバ
イスにフォーカスした研究会として生まれ変わったものである.
 本研究会では,参加者は約30人で,9件の発表が行われた.東京大学,京都大学,
大阪大学をはじめとする様々な大学からの発表があり,大学毎の研究における学問
や技術の共有ができた.
本研究会において私が最も印象に残った研究は,山下らによる”ペン把持力のセン
シングによる筆記量推定手法”である.この研究では,ペンに圧力センサを装着す
ることで,文字を書くときに指先からペンにかかる圧力をセンシングし,その圧力
の変化の様子から書いた文字の量を測定することで,授業におけるユーザの理解力
を推定するものである.理解力は文字を書いた量と相関があるものと仮定している
点も興味深かった.発表における動画では,圧力の変化が文字の種類によって変化
している様子が伝わっていた.質疑応答の際には,圧力の変化の様子を学習するこ
とで文字の識別も可能になるのではないかという意見も多かった.
 他に私が興味を持った研究は,三田らによる”タスク処理行動に関するライフロ
グを用いたタスク成否予測の基礎的検討”である.この研究ではユーザのタスク遂
行における過去のライフログを用いることで,将来のタスク予測時間及びタスク推
奨時間を算出し,そのユーザに則したタスク完了までのスケジュールを提示する.
その提示された結果によって,ユーザのタスクの達成率がどう変化するかについて
検討していた.
 また,野見山らによる”自動車の空間移動履歴に基づく体験の流れを考慮した観
光計画システム”も興味深かった.この研究では,過去に特定の地域において観光
した人の行動パターンを学習することで,その地域において良いとされる行動パタ
ーンを推薦する.その推薦項目を簡単なアプリケーション操作で動かし,観光計画
を立てることができるというものである.このシステムを使用した場合と,インタ
ーネットを用いて観光計画を立てた場合とを比較したときのユーザの満足度を調査
していた.
 私は頭部にデバイスを装着しないウェアラブルデバイスでの頭部姿勢推定手法の
提案について発表を行った.この研究に関しては既存の関連研究がほとんどなく,
頭部姿勢の推定については様々な手法が考えられる.その中で簡単な手法の一つと
思われる,単回帰分析により,深度センサから得られた3次元点群データと頭部姿
勢を相関付け,そのパラメータの精度について評価した結果を発表した.質疑応答
に関しては頭部姿勢推定手法や,デバイスの装着位置についてなど様々な意見をい
ただき,大変勉強になったとともに,今後の研究に役立てたいと思う.
 全体としては,様々な研究分野の方との意見交換することで新しい知見を得るこ
とができ,非常に良い経験になったと感じている.
 次回のSIG-DeMO-02研究会は2016年10月13日~14日の期間に北海道で開催される.
https://www.his.gr.jp/meeting/217-pro.html

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