エンタテイメントコンピューティング 2016 参加報告
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|◆ エンタテイメントコンピューティング 2016 参加報告
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谷中 俊介(神奈川工科大)
エンタテイメントコンピューティング2016は,エンタテイメントという共通の事
柄に対し,学術的な研究成果の発表・共有に留まらず,他分野の視点も取り入れ
る,ユニークな会議である.
今年は,2016年11月12日から11月14日の3日間にかけて開催された.大阪グラン
フロントおよび相愛大学本町キャンパスを会場とし,口頭発表58件,デモ発表48件
が行われた.
12日に行われた大阪グランフロントでのデモ発表は,エンタテイメント分野にお
ける国際会議ACE(13th International Conference on Advances in Computer Ent
ertainment Technology)と共催され,ACEの参加者にもECのデモを体験していただ
くといった,国際的な交流が行われた.また,昨年に引き続き『水曜どうでしょ
う』のディレクタである藤村忠寿氏と,今年は『ダウンタウンDX』のプロデュー
である西田二郎氏もお招きし,デモ発表の体験と批評を頂いた.
13日に行われた招待講演では,Anton Nijholt氏(Imagineering Institute, Ma
laysia & University of Twente, Netherlands)が,デジタル技術の発展にともな
う環境や社会の変化における「ユーモア」について講演された.筆者の知る限りで
は,講演者が海外から招かれ,英語で行われるのは,2010年以降ではなかったこと
と思われる.
今年はACEとの共催も含め,より国際的な視野を強めようとする印象を受けた.1
3日には,坂本大介氏,藤井叙人氏,長谷川晶一氏による特別企画,「EC研究を論
文にするには」も行われた.たとえば被験者の主観評価において,各被験者が下す
評価に再現性を持たせるためには,被験者を募る段階で,評価対象に見合った被験
者の絞り込みが必要であること.被験者の技術や類似経験に対する調査の重要性が
説かれた.被験者間での評価・採点基準の差異だけでなく,被験者個人において
も,評価・採点基準が実験中にも変化しうる話もなされた.被験者の技術や経験値
が浅い場合,相対的な評価はできても絶対的な評価は困難であるという知見が共有
された.論文として書き上げられた技術・結果としての知の共有だけでなく,論文
にするための,いわば技術・結果を共有するための術を共有する取り組みは,学術
会議におけるもう一つの共有すべき知という所感を得た.
今年も実施されたオーガナイズドゲームは,大きな盛り上がりを見せていた.ゲ
ームが実施される会議は,ユニークである.
次回は,2017年9月16日から9月18日に,宮城県仙台市の東北大学片平キャンパス
にて開催される.次回もエンタテイメントコンピューティングならではとなる会議
に期待したい.
http://ec2016.entcomp.org/