CHI2016 参加報告
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|◆ CHI2016 参加報告
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小山 裕己(東京大学)
2016年5月7日から12日の6日間に,アメリカ・サンノゼにてCHI 2016 (ACM
SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems) が開催された.CHI
はHuman-Computer Interaction (HCI) 分野におけるトップカンファレンスの一つ
で,数千人の参加者が集まる巨大な会議である.
開催地のサンノゼはシリコンバレーの中心的都市の一つである.CHIの会場とな
ったコンベンションセンターのすぐ目の前には世界最大級のソフトウェア企業であ
るAdobe本社があり,私自身も会議開催前日に訪問・見学させて頂いた.
会期の1日目,2日目には論文発表はなく,その代わり40を超える様々なワークシ
ョップやシンポジウムが行われた.私は今年度が2回目の開催となるEmerging
Japanese HCI Research Collectionに参加した.これは日本で行われている研究を
世界に紹介するとともに,研究者同士の交流を目指したものである.私は残念なが
ら参加できなかったが,日本人研究者の落合陽一氏もオーガナイザとして参加して
いるCrossFAB Workshopも大盛況だったようである.ここではSIGGRAPH,UIST,CHI
などのコミュニティでバラバラに活動しているFabricationの研究者を一同に集め,
将来のFabrication研究について活発な議論を行ったそうである.
会期の3日目以降は会議のメインコンテンツである論文発表が行われた.今年の
CHIでは2300件を超える論文が投稿され,うち554件が採択された.論文数は年々増
え続けており,今回は論文発表だけで最大11パラレルセッション (コースやパネル
などを合わせると20パラレルセッション) という状況が発生するなど,とても個人
で全体像を把握できない状況となってしまっている.またHCIという分野の特性上,
研究内容も多岐に渡っており,技術的な貢献が中心の論文から,文化人類学的考察
や心理実験などを行う論文まで,ごちゃ混ぜ状態になっているのがCHIの面白いと
ころである.このようなカオス状態でも健全な査読プロセスを保つ工夫として,
CHIでは論文投稿時に9つのsubcommitteeから1つを選び,基本的にはその
subcommittee内で査読と採否の議論が行われるという仕組みになっている.私自身,
機械学習を応用したデザイン支援システムについての論文
( http://koyama.xyz/project/SelPh/ ) が採択され登壇発表を行ったが,投稿時
には「Technology, Systems, and Engineering」というsubcommitteeを選択した.
なおVR関連のトピックとしては,「Augmented AR and VR Experiences」という
セッションが特に注目を集めていたようである.会場からは人が溢れ,多くの人が
廊下で中継動画を見る羽目になっていた.このセッションで発表されたMicrosoft
Researchによる論文「Augmenting the Field-of-View of Head-Mounted Displays
with Sparse Peripheral Displays」( https://youtu.be/af42CN2PgKs ) は,低解
像度の追加ディスプレイによってAR/VRゴーグルの視野角を拡張することで,周辺
の認識を向上したり酔いを軽減したりする効果が得られることを示した研究で,
Best Paper Honorable Mentionを受賞した.
なお,論文に関するまとめ動画 ( https://youtu.be/dUDHQNuCKWQ ) がYouTube
で配信されており,CHIで発表される論文の雰囲気を一気に把握するのに非常に便
利である.来年のCHI 2017は2017年5月6日から11日の期間にアメリカ・デンバーで
開催される.
http://chi2016.acm.org/
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