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2013年4月25日

IEEE VR2013 参加報告

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|◆ IEEE VR2013 参加報告
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 荒川卓也(東京大学)

 今年のIEEE VR 2013は,3月16日から3月20日まで,アメリカ,フロリダ州のオー
ランド,Walt Disney World Swan Resortで開催された.前半の2日間は併催の3DUI
シンポジウムや4件のワークショップが実施され,18日から3日間がVRの本会議であ
る.オーランドは,朝夜は冷えるものの日中は20度を超えることもあり,日差しが
非常に強い印象があった.会期中初めの3日間は晴れていたが,最後の2日間は少し
雨がパラついた.会場はディズニーリゾートのホテルということで,ホテルではデ
ィズニーリゾートへ訪れた子供連れの客が多く,ディズニーのグッズなどを持ちな
がら楽しそうに家族で語り合っていた.
 3日間の会期中,3件のKeynote,8つのPaperセッション,Poster(54件),Demo
(19件),3件のPanel,5件のWorkshop,Tutorial(3件),Video(6件)が行われ
た.初日の夜にはFLAVRS Demonstrationsが企画され,フロリダ州内の大学により
最近の研究を紹介する22件のデモンストレーションが行われた.2日目夜のバンケ
ット中にディズニーのMark Mine氏によるKeynoteがあり,その後,4つのディズニ
ーパークの内の1つであるエプコットで夜のイルミネーションショーを見るという
充実したプログラム構成だった.
 昨年に引き続きKinect関連研究も多かったが,今年は認知系の研究が特に目立っ
た感があった.全体的な印象としては奇抜なアイデアによるものよりも,VRの古く
からのテーマに新しい技術と高い完成度で取り組んだものが多かったと感じた.厳
しい査読を勝ち抜いた論文はどれもハイレベルであり,発表者のプレゼンテーショ
ンも非常に上手だった.今回の学会では,学会が始まる前に予めアワードを決定す
る方法が取られた.これは,アワードの論文を事前に知りつつ発表を聞けるなどの
メリットを考慮しての試みである.フルペーパー,ショートペーパーのベストアワ
ードが一つのセッションにかたまり(セッション名 Displays),このセッション
では質問マイクに長い列ができるほど活発なセッションであった.
 アワードは,ペーパーに関してBest award,Honorable mentionの2件,ショート
ペーパー,ポスター,Demoに関してはBest short paper,Best poster award,
Best demo awardの1件づつで,計5件であった.
 Best paperには,ドイツのbauhaus universitat weimarに所属しているStephan
Beck, Andre Kunert, Alexander Kulik, Bernd Froehlichによる“Immersive
Group-to-Group Telepresence”が選ばれた.デプスカメラなどを使い,プロジェ
クションにより得た異なる場所の複数の人間の3次元情報を統合することで,複数
人での交流を可能とする,新たなテレプレゼンスの手法が提案されていた.テレプ
レゼンスの方法は数多く検討されているが,全身をリアルタイムに複数人3次元再
構成できる提案手法の完成度が高い点と,3次元再構成による複数人の遠隔コミュ
ニケーション方法の応用可能性を,後の詳細なユーザスタディで示したことが評価
されたと思われる.
 日本からは,Best posterに慶應義塾大学の黒木らによる“Haptic Transmission
System to Recognize Differences in Surface Textures of Objects for
Telexistence”が選ばれた.遠隔地にある物体の表面を触った時の圧力,振動,温
度の情報を伝えるテレイグジスタンス触覚伝送システムを提案している.また
Best demoには,東京工業大学の熊澤らによる“An actuated stage for a tablet
computer:generation of tactile feedback and communication using the motion
of the whole tablet”が選ばれた.タブレットコンピュータを組み合わせた触覚
フィードバックデ バイスで,ボールベアリングの偏心軸回転を利用して触覚フィ
ードバックを行うというものであった.
 著者は今回が初めての参加で,ポスター発表を行った.ポスターセッションでは
基礎系からアプリケーション系のものまで,多くの分野がカバーされており,所々
で発表者と聴講者の間で活発な議論が行われている場面が観察できた.著者もポス
ター展示の際に,1人の聴講者と30分近く質疑を行うこともあり,多くの人々の意
見を得て,多くの事柄を学ぶことができた.
 次回のIEEE VR 2014は,ミネソタ州ミネアポリスにて2014年3月29日から4月2日
まで開催される予定である.詳細はhttp://ieeevr.org/2013/を参照.

Category: 学会参加報告

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