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2012年10月25日

第12回VR医学会学術大会 参加報告

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|◆ 第12回VR医学会学術大会 参加報告
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村田 浩樹(京都大学)

 第12回日本VR医学会学術大会は,2012年8月25日に千葉大学医学部附属病院にて
開催された.本大会は,VR技術の医学応用により,医学および医療の進歩向上に貢
献することを目的として開催されており,工学系や情報系研究者,医療関係者が多
く参加していた.大会当日は16件の一般演題に加え,千葉大学クリニカルスキルズ
センターに関する特別講演と施設見学が行われた.
 一般演題は,発表10分,質疑応答3分の口頭発表で行われた.各種シミュレータ
を用いたスキルトレーニングの習熟度評価や,三次元CGを駆使した術前計画・術中
支援システムの開発,手技訓練用デバイスの開発など,発表内容は多岐にわたっ
た.特に,腹腔鏡手術に関する研究が多く見られた.腹腔鏡手術とは,患者の腹部
にあけられた小孔に腹腔鏡や鉗子を挿入し,モニタに表示される映像を観察しなが
ら手技を行う低侵襲な手術法である.田川和義氏らは,医学生が初期教育から異型
を含めた解剖知識や手術手技を学べる教材として,シナリオに応じて臓器異型を表
現可能なモデリング手法を組み込んだ腹腔鏡手術シミュレータを提案していた.異
型などの特殊症例を実践で学ぶことができる機会は限られるため,シミュレータを
用いて反復学習することが手術リスク軽減に繋がると感じた.鈴木拓氏らは,両手
が鉗子でふさがった執刀医と周囲の医師や看護師が意思疎通を円滑に行えるよう,
小型赤外LEDやフットスイッチを用いた術中指示システムを構築していた.術中の
連携ミスは患者に重篤な結果を招く危険性があるため, システム自体をトレーニ
ングするプログラムも考える必要があると感じた.
 特別講演・施設見学では,医療安全教育のためのクリニカルスキルズセンターの
役割について述べられた.“learning by doing”方式による診療技能習得の過程
で多くの医療過誤が発生しているため,経験の浅い学生や医師は,シミュレータな
どを利用した患者を対象としない研修を受けることが望まれている.こういったプ
ログラム実践の場としてクリニカルスキルズセンターを設置・運営する必要性が増
しているのである.医療の安全性や患者満足度を高め,患者中心の医療を実現する
ことがクリニカルスキルズセンターの役割となる.施設は全国的にも最大規模と
なっており,スキルトレーニング用シミュレータなども充実していた.クリニカル
スキルズセンターの詳細に関しては,以下のURLを参照されたい.

URL: http://www.chibauniv-ccsc.jp/

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