SIGGRAPH2012 Technical Papers 参加報告
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|◆ SIGGRAPH2012 Technical Papers 参加報告
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須佐 育弥(東京工業大学)
今年も世界最大のコンピュータグラフィックス,インタラクティブ技術の学会・
展示会であるSIGGRAPH2012が開催された.会期は2012年8月5日から8月9日の5日間
に渡り,開催地は近年最も開催数が多いアメリカ・ロサンゼルスのLos Angeles
Convention Centerにて開催された.
技術論文の発表の場であるTechnical Papersは投稿数449件の内94件(採択率
21%)と最近のTOG(Transaction of Graphics)に掲載された論文38件,計132件の
発表が行われた.今年のTechnical Papersは31セッションにそれぞれ4件程度の発
表が当てられ,質疑を含む約30分の口頭発表形式にて行われた.セッションの内容
はCGを構築するのに重要な要素である力学系,光学系をはじめ,画像処理,音響,
知覚心理,インタラクティブシステムなど多岐に渡り,いずれのセッションもバー
チャルリアリティ技術に深く関連するものであるといえる.
筆者が参加したセッションで特に興味深かった発表は以下のものである.
・Synthesis of Detailed Hand Manipulations Using Contact Sampling.
従来のモーションキャプチャシステムでは人間が物を掴み,操作する時の詳細な
手先の動きを計測することは難しい.本研究は手先の動きを計測するのではなく,
掴んだ物の運動から物に加わる力を算出し,手と物の位置関係が物理的に合うよう
に手の動きを生成している.このようにすることで,片手でフライパンを掴みなが
ら,もう片方の手で容器を持ち材料を入れるという,手先を複雑に操作するシーン
が実現できていた.
・Deformable Objects Alive!
柔軟な体を持つキャラクタの動作生成方法を提案している.従来はキャラクタに
無理やり外力を加えることで変形を生じさせ動作を生成していた.しかし,キャラ
クタ自身の運動量が保存されていないため,非現実的な動作となっていた.本研究
ではキャラクタの内力をrest shape(デザイナが設定するキャラクタの形)に基づ
いて生じさせることで,運動量が保存された物理的にもっともらしい動きを実現す
る.これにより,例えばティーカップが転げ回る,食パンの形をしたキャラクタが
クネクネ歩くなど,キャラクタが自立的に動いていような表現ができていた.
筆者は2008年以来のSIGGRAPH参加となるが,今年はplausible(もっともらしい)
という単語を良く耳にした.コンピュータグラフィックスの分野では正確さを追求
するというよりは,もっともらしい動き,表現を実現することに力を入れているよ
うに感じられた.
次回,40回目の開催となるSIGGRAPH2013はアメリカ・アナハイムで,また
SIGGRAPH2014はカナダ・バンクーバーでの開催が予定されている.
( SIGGRAPH2012: http://s2012.siggraph.org )
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