HOME » 学会参加報告 » 第11回VR医学会学術大会 参加報告
2011年9月30日

第11回VR医学会学術大会 参加報告

+----------------------------------------------------------------------+
|◆  第11回VR医学会学術大会 参加報告
+----------------------------------------------------------------------+

田川 和義 (立命館大学 立命館グローバル・イノベーション研究機構)

 第11回日本VR医学会学術大会は,2011年8月27日に奈良先端科学技術大学院大
学にて開催された.本会はVR技術の医学応用に関する国内会議であり,工学系
研究者だけでなく,医療関係者も多く参加する医工連携の会議である.27件の
一般演題に加え,特別講演が行われた.参加者数は約80名であった.
 特別講演は,和歌山県立医科大学の吉田宗人氏による,脊椎手術のナビゲー
ションシステムについての講演であった.腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭
窄症など,神経が圧迫されて症状が出る疾患に対しての従来の手術では,大き
な切開を加えて脊椎から筋肉を剥離し,神経に対する圧迫を取り除いており,
患者の苦痛が大きく,術後安静期間が必要で,社会復帰に長期間を要していた.
これに対し,内視鏡視下脊椎手術は,腰椎の周囲の筋肉に1.6ミリメートルの管
を入れて,筋肉を剥がすことなく神経を確認してヘルニアを摘出する方法であ
り,術後の疼痛がほとんどなく,麻酔から覚めたらコルセットを着けて歩くこ
とができる.しかし内視鏡下脊椎手術は,ごく限られた領域を拡大して表示す
るために,時としてdisorientationに陥りやすく,部位誤認につながる.その
ため従来は,MRI画像などの2次元情報から執刀医の頭の中で構築した3次元情報
を基とした術前計画を行っていたが,高いコストを要していた.現在では,MRI
画像などの2次元の情報から構築した3次元モデルによる手術(掘削)シミュレー
ションを行っており,術前計画が容易となった.今後の展開として,内視鏡か
らの映像にシミュレーション結果等を重畳表示することにより,直感的に情報
を得られるナビゲーションシステムについて述べられた.
 一般演題は発表10分,質疑応答2分の口頭発表のみで行われた.発表内容は,
臓物等のモデリング,手術シミュレーション,可視化などの要素技術から,実
際の医療現場や医療訓練での実用を目指した,脊椎内視鏡手術術中ナビゲーショ
ンにおける磁気センサーによる鏡筒先端位置測位の試みや,臓器異型モデルの
開発・患者特異的腹腔鏡下手術シミュレータの開発,放射線画像教育システム
の開発など,幅広く研究成果が報告されていた.
 筆者自身も手術訓練シミュレータの研究開発に関与しており,関連する研究
発表も多く,大いに刺激を受けた.次回は2012年8月25日に千葉で開催される予
定である.詳細については以下のURLを参照されたい.
http://www.jsmvr.umin.ne.jp/
Category: 学会参加報告