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2025年12月25日

ISMAR2025

小島 隼(大阪大学)

ISMAR 20252025108日(火)から1012日(日)にかけての5日間,韓国のDCC 大田コンベンションセンターにて開催された.ISMARは拡張現実(AR)および複合現実(MR)の分野におけるトップカンファレンスであり,ISARISMR2002年に統合されて以降,20年以上の歴史を有している.*1 

今回の参加登録数は35か国から過去最高の781件に達し,うち韓国から322件,日本からは56件であった.会期中には,3件の基調講演,217件の口頭発表,169件のポスター発表,および42件のデモンストレーションが実施された.TVCG採択率は7.9%,会議論文採択率は20.6%,ポスター採択率は65%であった. 

2日目には,CALIVERSECEODongkyu Kim氏による基調講演「Beyond Words: Beyond Reality [CALIVERSE]’s Vision for the Metaverse」が行われた.本講演では,Unreal Engine 5AI照明技術を活用し,実写とリアルタイム3Dを融合させた没入型メタバース「CALIVERSE」の開発ビジョンが紹介された. 

3日目には,Samsung Electronics所属のKihwan Kim氏が「A Journey to AI x XR: What is the Best Device for the Multi-Modal AI Era?」と題して講演を行い,マルチモーダルAIXRの融合による技術革新,および同社のProject Moohanを通じた次世代デバイス・産業応用の展望を示した.同日夜にはバンケットとセレモニーが開催され,XRアートパフォーマンスが披露されるなど,会場は大いに盛り上がった. 

4日目には,Korea TelecomChief Responsible AI OfficerであるSoonmin Bae氏による「Distributed AI: The Future of Connected Intelligence」と題した基調講演が行われた.本講演では,エッジとクラウドが連携して知能を形成する分散型AI時代の到来とその可能性について議論された.講演後の閉会式では,ベストデモンストレーション賞,ベストポスター賞,ベストペーパー賞,およびベストスチューデントボランティア賞の表彰が行われた. 

ベストデモンストレーション賞には,プレイヤーの現実世界での運動パフォーマンスをデータ化し,それをもとに生成AIがキャラクターやカードを自動生成する「Avacard: Exercise Data-Driven AI-Generated Cards to Enhance Interactivity for Extended Reality Exergame through Metagame」と,追加の外部装置を必要とせず車載環境を活用して没入感を高める「Demonstration of Multisensory In-Car VR: Repurposing the Vehicle’s HVAC System and Power Seat for Immersive Haptic Feedback」の2件が選出された.いずれのデモンストレーションも展示ブースで大きな注目を集めており,筆者も体験を通じて,AIと身体感覚・環境要素を融合させた新しいインタラクション設計の可能性を強く実感した. 

5日間を通して,AIXRが融合する最前線に直接触れ,技術の未来を肌で感じることができた.本学会への参加を通じて,自身の研究をさらに深化させたいという強い意欲が芽生えた.なお,次回のISMAR 2026は,アドリア海に面した港町イタリア・バーリで開催される予定である. 

*1:詳細は https://www.ieeeismar.net/2025/ を参照

Category: 学会参加報告

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