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2024年9月2日

Eurohaptics 2024

亀山 直生(九州大学)

 触覚に関する国際会議Eurohaptics2024がフランスのリール大学で6月30日から7 月3日にかけて4日間開催された.発表された論文数はテクニカルペーパー82件(採 択率58%,口頭発表37件,ポスター発表45件),Work-in-Progressポスター63件 (採択率78%),デモ展示は64件であった.これらの中から,Best Paper Award 3件,Best Poster Award 3件,Best Work-in-Progress Award 5件,Best Demo Award 3件が選出された.
 会議の初日には,ワークショップが開催された.会場では6つのワークショップ がそれぞれの部屋で並行して行われ,実際に製品を分解しながら,触覚技術を活用 した製品の作り方について解説するプレゼンテーションなどが提供された.
 二日目から四日目にかけて行われたDemo展示は,大きな賑わいを見せており,多 くの参加者が新しい触覚体験を楽しんでいた.展示ではHMDと併用してVR体験を豊 かにする触覚フィードバック技術や,指の変形を取得するセンシング技術などが紹 介されていた.筆者も体験したFadyらによる「INITIAL STUDY TO CREATE A SENSATION OF WETNESS BY COMBINED TEMPERATURE AND VIBRATION STIMULI」では, 振動刺激と温度刺激を組み合わせることで湿り気を再現する展示が行われた.参加 者は実際に濡れた布に触れた時と再現刺激を用いた時を比較することで,湿り気の 再現度を確かめることができた.
 四日目に行われたKeynoteプレゼンテーションでは,Scuola Superiore Sant’Annaの教授であるAntonio Frisoli氏が「From wearable haptics to the new frontiers of telerobotics」というテーマで登壇した.講演ではウェアラブ ル触覚技術と外骨格型触覚技術の進化と今後の動向が紹介され,それらが遠隔操作, 操作スキルの習得,遠隔医療などにおいて果たす重要な役割が解説された.
 また,今回のEurohapticsでは,触覚技術とデザインを融合させたアート展示も 行われた.Robinらによる「Quantum Jungle」では,壁面に取り付けられたバネに 触れることで,その奥のディスプレイに映った光のアニメーションが変化した.複 数のアニメーションとバネの触感が組み合わさることで,斬新なインタラクション が実現されていた.
 筆者は学生ボランティアとして会議に参加した.ボランティアは運営の手伝いを することで会議の参加費が免除される.Eurohaptics2024では,計11名の学生がボ ランティアとして参加した.1日あたりの稼働時間は4〜8時間程度で,受付,クロ ークルーム,ポスター貼り,口頭発表のサポート,写真撮影などをシフト制で担当 した.ボランティアは全員お揃いのTシャツを着て働いており,仕事がない時間帯 は自由に会議を回れた.筆者はボランティア活動を通じて,他の学生と仲良くなり, 充実した時間を過ごすことができた.初めて国際会議に参加する学生や,参加者 に知り合いが少ない学生には,このボランティア制度をぜひお勧めしたい.
 Eurohapticsは同様に触覚に焦点を当てた国際会議IEEE World Haptics conferenceと毎年交互に開催されており,来年のWorld Haptics conference2025は 7月8日から11日まで韓国のスウォンで開催が予定されている.

公式サイト:https://eurohaptics.org/ehc2024/

Category: 学会参加報告