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2023年9月25日

SIGGRAPH2023発表

東條 建治(東京大学)
 8月6日から8月10にかけての5日間,コンピュータ・グラフィクス(CG)分
野最大の国際会議,SIGGRAPHがアメリカ・ロサンゼルスで開催された(URL:
https://s2023.siggraph.org/).SIGGRAPHは今年度で節目の50回目の開催
であり,パンデミック後で初めて制限なしの現地開催ということもあって,
会場となったロサンゼルス・コンベンションセンターは大勢の参加者で賑わ
った.
 会場では例年通り,最新のCG研究発表が行われるTechnical Papersセッシ
ョン,企業や大学のグループが機材を持ち込んでデモを行うEmerging Techn
ologies(E-Tech)やLabプログラム,企業展示ブースなど多くの見所があり,
どれも現地参加者で活気に溢れていた.筆者はTechnical Papersセッション
での発表のために参加していたが,論文発表以外にもE-Techなどでの最新技
術のデモを体験するなど,いろいろな楽しみ方ができた.体験した中では特
に,Nvidia社のNeRF技術を用いたライブビデオ会議システムのデモが印象的
だった.その場で取った写真をもとに一瞬で自分の顔のリアルな3Dアバター
を作成し,リアルタイムで自分の表情をアバターに転写して送信できる技術
には驚かされた.人間の顔のデータセットで事前学習された機械学習モデル
を使用してアバターを作成しているため,実際の自分の顔より微妙に鼻が高
くなるなど,体験して初めてわかることもあり面白かった.
 筆者が発表したTechnical Papersセッションでは,616本の論文が投稿され,
126本が論文誌ACM Transactions on Graphicsに掲載されるジャーナル・トラ
ックに,86本がカンファレンス・トラックに採択された.論文発表は,各論
文につき10分(カンファレンス論文は9分)の口頭発表のあと,合同の質疑応
答時間(同一セッションで発表された論文のどれにでも質問できる)があり,
その後は発表したホール内の指定された場所でインタラクティブ形式でのポ
スターセッションを行うという形式であった.近年の論文本数の増加傾向を
受け,全体的に発表時間を短縮しつつ,特に興味のある論文について集中的
に発表者と聴衆が議論を交わせるよう,このような少し変則的な形となった
ようである.筆者はファブリケーションのセッションであったが,筆者を含
め,各発表者はポスターセッション中に実際の制作物を手に取ってもらうな
ど,インタラクティブ形式ならではの有意義な議論を交わしていた.筆者は
Stealth Shaperと題して,ステルス航空機の形状様式から得た着想をもとに,
様々な入力形状に対してその初期形状を保ったまま反射特性を最適化するた
めのアルゴリズムを発表した(URL: https://kenji-tojo.github.io/public
ations/stealthshaper/).
 本年度はBest Papers賞として5 件, Honorable Mentions賞として8件の論
文が表彰された.Best Papers賞の顔ぶれだけでも,VRのための新しいnear-
eyeディスプレイの提案,所望の変形特性を生み出すストライプ模様のファブ
リケーション,表面再構成のための法線の向き付け手法,NeRFの高速レンダ
リング手法,ロボットの足のモーションの生成手法と非常に多岐にわたる研
究がSIGGRAPHで発表されていることが見て取れる.こうした多様性もSIGGRA
PHの魅力の一つである.
 来年のSIGGRAPHはアメリカ・コロラドのデンバーで開催される.今回の参
加で受けた刺激を忘れず,来年もまた参加できるように研究に打ち込みたい.
Category: 学会参加報告