HCII 2022
前田 清洲(東京大学)
2022年6月26日(日)から7月1日(金)にかけてInternational Conference on Human-
Computer Interaction 2022 (HCII2022) が開催され,71の国と地域から2,264名の
人が参加した.もともとはスウェーデンのヨーテボリで開催予定だったものの,
COVID-19の影響によりオンラインのみでの開催となった.オンライン会議実施には
Whovaと呼ばれるプラットフォームが使用された.私はこの会議に参加するまで
Whovaのことを何も知らなかったが,Zoomとの連携がサポートされているほか後か
らセッションごとの録画やチャットの確認が容易で,メッセージやコミュニティ,
写真シェアなどのソーシャルな機能も充実しているようだった.私が参加した限り
では特に不具合もなく,今まで使用したオンライン会議プラットフォームの中で最
も使いやすいと感じた.
オープニングキーノートにはUniversity of MarylandのBen Shneiderman教授が
招かれた.教授は“Human-Centered AI: A New Synthesis”というタイトルで自身
の著書をもとに,人間を中心に据えて人間の能力を拡張・支援するAI (Human-
Centered AI: HCAI) に関して,人間によるコントロールと機械による自動化を二軸
とするフレームワークを用いて具体例を交えながら説明した.また,デザイナー,
エンジニア,政府といった様々なステークホルダーがどのようにHCAI技術を構築し
ていくのが良いかといったテーマについて語っていた.
会議では23のチュートリアル,3つのワークショップに加えて,6,244件の投稿が
あり,1,276のペーパー・275のポスター,Late Breaking Workとしては296のペー
パー・179のポスターが306のパラレルセッションにおいて発表された.例年通りペ
ーパーは21のテーマで分かれており,会議初日にはそのテーマごとに一つずつベス
トペーパーがアナウンスされていた.三つのワークショップは全てキーノートに寄
せているのかは定かではないが,“Design Thinking and AI”などHCIとAIに関連す
るものであった.常時数十のセッションが並行して進むため全ての発表を聞くこと
は不可能であったが,ペーパーとポスターのタイトルやアブストラクトを確認して
気になるものを視聴した.私は“VR 2.0 and Novel Interface Technologies”とい
うセッションで視覚障害者の方の見え方を自在に再現するオーサリングツールに関
する研究の発表を行った.オンラインであったためセッション以外の場で研究につ
いて話す機会はなかったものの,質疑応答などでフィードバックを頂き今後研究を
発展させていくモチベーションも高まった.
25回目となる次回のHCII2023はデンマークのコペンハーゲンで2023年の7月末に
開催予定である.対面での会議には久しく参加していないので,この会議に限らず
現地開催が増えていくことを期待したい.
公式サイト:https://2022.hci.international/